黄巾の乱に続く各地の反乱が孫堅や劉備たちの活躍で平定された頃、朝廷ではある出来事によって大きな混乱が起きようとしていました。
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目次
霊帝の死と朝廷の混乱
前回は、劉備が復活したところまででしたよね。
罪が許されて良かった…。張飛さん、もう暴れちゃダメですよっ!
そうですね!
今回は、舞台が変わって朝廷でのお話になります。
ご確認
この記事は『三国志演義』に基づいてお話ししています。正史『三国志』における霊帝の崩御と朝廷の混乱については、こちらをご覧ください。
なぜ何進は董卓を洛陽に呼び寄せたのか?霊帝の崩御と朝廷の混乱
霊帝の遺言
確か、朝廷で大きな出来事が起こるんでしたよね。
そうです。189年4月、病気で寝込んでいた霊帝が、とうとう亡くなってしまったんです。34歳でした。
まだ若いのにな。宴会ばっかりやってた不摂生が原因だな(笑)
かもしれませんね(笑)
ところで、霊帝には2人の皇子がいたことを覚えていますか?
えっと…。何皇后が生んだ辯くんと、王美人が生んだ協くんでしたっけ?
正解です。さすがですね!
そぉ?常識やんっ!
王美人が何皇后に毒殺されたから、劉協は董太后が面倒を見てたんだよね。
はは…。タカオくんも正解ですよ。
その関係を図で表すと、このようになります。
霊帝の血縁関係
ふむふむ…。
霊帝さんは後継者を決めていなかったんですか?
そうなんです。ですが、霊帝は亡くなる直前に、劉協に跡を継がせるように中常侍の蹇碩に遺言していました。
劉辯の方が年長なのにね。何皇后が王美人を毒殺してから、劉協をかわいがるようになってたんだよね。
その通りです。
霊帝の母親である董太后も、ずっと劉協に跡を継がせるように言っていました。
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何進暗殺計画
霊帝から遺言された蹇碩は、劉協を天子にするのに邪魔な何進の暗殺を計画します。
何進も何皇后も、当然劉辯を天子にしようとするだろうからね。
蹇碩は何進を暗殺するために、詔を出して何進を宮中に呼び出しました。
ですが、何進が宮門まで来ると司馬の潘隠が近づいてきて、何進に蹇碩の企みを知らせたのです。
何進は急いで屋敷に戻って重臣を集めると「宦官たちを残らず討ち果たしてしまおう」と打ち明けました。
これに対して、
「朝廷中に蔓延る宦官を根絶やしにするのは簡単なことではありません。万一機密がもれれば、こちらが滅ぼされてしまいます。ご再考下さい」
と、忠告する者がいました。典軍校尉の曹操です。
ですが何進は、
「お前のような若輩者に朝廷の大事は分からん!」
と、まともに聞こうとしませんでした。
お〜っ、曹操!
確か済南国の相でしたよね。この時は朝廷にいたんだ。
そうなんですよ。黄巾の乱から少し経ちますので、その間に人事にも変更がありました。
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少帝の即位
協議を続けていると、何進に「後継者を決めるために参内せよ」という使者がきます。
絶対あやしいよ…。
これに対して曹操は「新しい天子を即位させる方が先決です」と言い、何進もこれに同意します。
何進は司隷校尉の袁紹に武装させると、何顒、荀攸、鄭泰ら大臣30人あまりを引き連れて参内し、劉辯(少帝)を天子に即位させ、同時に何皇后が皇太后として幼い少帝の代わりに政治を行うことになりました。
さらに、即位の儀式が終わると袁紹は、何進を暗殺しようとした蹇碩を捕らえるために宮中に乗り込みます。
必死で逃げる蹇碩ですが、同じ中常侍の郭勝によって殺されてしまいました。
勢いを得た袁紹は、「これを機に宦官たちを一掃しましょう」と何進に進言します。
曹操に袁紹、この時の朝廷は豪華メンバーだな。
宦官たちの中にも派閥があったんですね。
そうなんです。そして、これを見た張譲は、蹇碩の企みは自分たちには関係ないと、何太后に泣きつきました。
張譲って誰でしたっけ?
十常侍と呼ばれていた有力宦官たちのリーダー格の人物です。
霊帝は張譲を父、趙忠を母と呼んで信頼していたんだよ。
そうだった…(笑)
結局何進は何太后に張譲たちを助けるように言われ、蹇碩の一族を処刑するだけで良しとしました。
せっかくのチャンスだったのに。
前にやった、竇武さんと陳蕃さんの時と同じですね。
何太后は特に、宦官の後押しによって皇后になっていますから、宦官を庇う気持ちは竇太后よりも強いでしょうね。
でもさ、霊帝は劉協に継がせることを遺言してたんだから、宦官の方が正しいことをしてるんだよな。
暗殺なんて考えないで、普通に跡を継がせれば良かったのかも。
これはもう、どちらが主導権を握るかの戦いだから、どちらにせよ劉辯派と劉協派の争いは避けられなかっただろうね。
タカオくんの言うとおりです。
それだけ皇帝の権威が失墜していたということですね。
そっか…。
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何太后と董太后の対立
これで、皇位継承問題は一応落ち着いたのかな?
まだ納得していない人がいますよ。劉協を養育していた董太后です。
霊帝のお母さんね!
董太后は、何太后が朝廷でわがもの顔に振る舞っていることが許せません。
張譲たちを呼びつけて相談すると、劉協を陳留王に封じ、甥の董重を驃騎将軍に任命して、張譲たちに政務を仕切らせ始めました。
これに面白くないのが何太后です。
何太后は宴会を開いて董太后を招くと、「お互いに引き下がり、政務は大臣たちに任せましょう」と提案しました。
ですが、何太后にその気がないことが分かってる董太后は一歩も引き下がりません。
それどころか、何太后が頼りにしている何進など、董重に命じていつでも倒せると、何太后を挑発しました。
董重と何進ってどっちがエラいの?
そりゃ何進でしょ。これはちょっと調子に乗りすぎたね、董太后も。
そうですね。
何太后からこのことを聞いた何進は、さっそく対策に動き出します。
何進は「董太后は地方の官吏から賄賂を受け取っている」と上奏し、洛陽を離れて故郷の河間郡(河間国)で謹慎させるように命じました。
また一方では、3,000の近衛兵で董重の屋敷を包囲して驃騎将軍の官印を取り上げると、観念した董重は自ら命を絶ってしまいます。
そして、何進はひそかに人をやって、河間郡に向かう董太后を毒殺してしまいました。
董太后さんまで殺すことないのに。
敵対分子は徹底的に除いておかないと、あとあと自分たちが危険になるからね。
霊帝さんは劉協くんに跡を継がせたかったのに、劉協くんを支える人はいなくなっちゃったのね…。
黙って劉協に跡を継がせていたら、何進たちが滅ぼされていましたからね。どちらが良い悪いは言えませんよ。
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宦官たちの逆襲と宦官一掃計画
宦官たちの逆襲
董太后派が没落してしまうと、張譲、段珪らは何太后の兄・何苗と母・舞陽君に賄賂を贈り、またもや何太后に近づきます。
宦官は節操がないなぁ、まったく〜。
何苗さんと舞陽君って初めて出てきましたよね。
何進と何苗は共に何太后の兄に当たりますが、何進は先妻の子、何苗は何太后と同じく舞陽君の子になります。
何氏の家系図
ふむふむ。
何太后さんと何苗さんは舞陽君さんを通して血のつながりがあるけど、何進さんとは血のつながりがないのかぁ。
この場合、同じ兄弟でも親密度が全然違うね。こりゃ何進は孤立したな…。
でもこれで霊帝さんが亡くなる前の状態に近くなったのかな。もともと宦官もいたんだし。
ところがそうはいかなかったんです。
何太后に取り入った張譲・段珪らは「何進が董太后を毒殺をした」と言いふらし、何進に敵対する態度を取ったんです。
宦官たちも1回、何進に殺されかけてるからな。
宦官一掃計画
そのことを知った袁紹は「今宦官たちをことごとく除かなければ、後日きっと後悔します」と、再び宦官を一掃することを提案します。
ですが、この袁紹の提案は、密告によって張譲たちの知るところとなってしまいました。
そして、張譲はまたも何苗に賄賂を贈って何太后に働きかけます。
「大将軍(何進)は残忍なことばかり考えております。理由もなく十常侍を殺そうとするのは、乱の始まりとなりましょう」
何苗がこう言うと、何太后も同意しました。
ほどなくして参内した何進は、何太后に宦官一掃の計画を打ち明けますが、何苗に言い含められている何太后はこの申し出を認めません。
何進は返す言葉もなく退出し、「どうしたものか?」と袁紹に相談します。
すると袁紹は、「地方の豪族を呼び集め、その兵をもって宦官たちを討ち果たしましょう」と提案し、何進も同意して諸豪族を呼び寄せることに決めました。
これを聞いた主簿の陳琳は、
「宦官を滅ぼすのなら、速やかに兵を発して討つべきです。地方の豪傑たちが集まれば、それこそ大きな災いとなります」
と諫言しましたが、何進は相手にしません。
オレも陳琳に賛成だな。一気に滅ぼしてしまえば、あとで何太后には何とでも言えるでしょ。
でも、竇武さんと陳蕃さんの時のこともあるし…。
何太后も何苗も宦官擁護ですから、何苗を大将軍にして何進が逆賊にされる可能性だってありますよ。
むむ…。
袁紹の策はあながち的外れでもないのか。
どうでしょうねぇ。
そこへ、大声で笑いながら進み出る1人の男がいます。曹操です。
曹操さん、なにか名案があるのかな?
残念っ!
「曹操ははたして何を言い出すのでしょうか?」というところで、『三国志演義』の第2回が終わります。
くぅ〜、いつも良いところで終わるなぁ。
次回も楽しみにしていてくださいね。
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マリコちゃんのメモ帳
今回は少しややこしいので、もう一度おさらいしておきましょう!
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霊帝が亡くなる
霊帝が「劉協を帝位につける」ように蹇碩に遺言する。
蹇碩が何進の暗殺に失敗する。(蹇碩が犯人だとバレる)
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少帝(劉辯)が即位する
何進が強引に劉辯を即位させる。
袁紹が蹇碩を追い詰めて、蹇碩は仲間の郭勝に殺される。 -
宦官一掃計画(1回目)
袁紹の進言によって、何進が宦官を皆殺しにしようとする。
何太后が張譲たちを庇ったため、何進は宦官一掃を諦める。 -
何太后と董太后の対立
張譲たちが董太后の味方をして、董太后の力が強くなる。
何進が董重を自殺に追い込み、董太后を毒殺する。 -
張譲たちが何太后に取り入る
張譲たちが舞陽君と何苗に賄賂を贈って、再度何太后に取り入る。
張譲たちが「何進が董太后を毒殺した」と言いふらす。 -
宦官一掃計画(2回目)
袁紹がもう一度宦官の一掃を提案する。
何進が何太后に許可を求めるが、許されず。 -
諸豪族を招く
袁紹が諸豪族の兵で宦官を討つことを提案し、何進が了承する。
陳琳が反対する。
曹操が進み出る。
十常侍をはじめとする宦官たちの行いによって、政治は腐敗し、民は困窮して「黄巾の乱」が引き起こされました。
宦官たちの存在が諸悪の根源であることは、誰の目にも明らかだったのです。
何進は霊帝の死の混乱に乗じて宦官の一掃を計画し、諸豪族を洛陽に呼び寄せてしまいます。
ですがこのことは、さらに大きな混乱を招くことになりました。
次回
【012】十常侍たちの謀略にハマった何進と決行された宦官一掃計画