献帝けんてい許都きょとむかえた曹操そうそうは、徐州じょしゅうで手を組んだ劉備りゅうび呂布りょふを危険視するようになりますが…。

スポンサーリンク

二虎競食の計

二虎競食の計

画像出典:ChinaStyle.jp


マリコマリコ

前回は、曹操そうそうさんが献帝けんていさんを許都きょとむかえたところまででしたよね。

タカオタカオ

うん、いよいよ曹操そうそうが強くなっていくねっ!

王先生王先生

そうですね。今回は、舞台は変わって徐州じょしゅうのお話になります。

ご確認

この記事は三国志演義さんごくしえんぎに基づいてお話ししています。今回の「二虎競食にこきょうしょくの計」と「駆虎呑狼くこどんろうの計」については三国志演義さんごくしえんぎの創作になります。

曹操が朝廷を支配する


王先生王先生

さて、許都きょとに都をうつした曹操そうそうは、人事の刷新に取りかかります。


曹操そうそうは、みずからを大将軍だいしょうぐん武平侯ぶへいこうに封じると、

  • 荀彧じゅんいく侍中尚書令じちゅうしょうしょれい
  • 荀攸じゅんゆう軍師ぐんし
  • 郭嘉かくか司馬祭酒しばさいしゅ
  • 劉曄りゅうよう司空しくう掾曹えんそう(属官)

に任命し、

  • 毛玠もうかい
  • 任峻じんしゅん

の2人を典農中郎将てんのうちゅうろうしょうとして食糧や徴税の監督に当たらせ、

  • 程昱ていいく東平相とうへいしょう
  • 范成はんせい董昭とうしょう洛陽令らくようれい
  • 満寵まんちょう許令きょれい

に任命し、

  • 夏侯惇かこうとん
  • 夏侯淵かこうえん
  • 曹仁そうじん
  • 曹洪そうこう

をみな将軍しょうぐんとし、

  • 呂虔りょけん
  • 李典りてん
  • 楽進がくしん
  • 于禁うきん
  • 徐晃じょこう

をみな校尉こういとし、

  • 許褚きょちょ
  • 典韋てんい

を共に都尉といとし、その他の将校しょうこうたちもそれぞれ任官させました。


この時より権力はことごとく曹操そうそうの手に収まり、朝廷の重要な政務はまず曹操そうそうに報告し、その後に初めて天子てんし献帝けんてい)に奏上することとなりました。



マリコマリコ

うわぁ、一度にこんなに覚えられないよっ!

タカオタカオ

覚えなくて良いよ(笑)

王先生王先生

はい。曹操そうそうが朝廷で大きな権力を持つようになったということだけ、覚えておいてください(笑)

二虎競食の計


王先生王先生

大事業を成しげた曹操そうそうは、奥座敷で宴会を開きます。


そこで参謀さんぼうを集めて言うには、


「近頃劉備りゅうびは、徐州じょしゅうに軍隊を置いてみずから州の管理をしておる。

そしてっ!わしに敗れて逃げ込んだ呂布りょふを、劉備りゅうび小沛しょうはいの城に住まわせおった。

もしこの2人が協力して攻めて来るようなことがあれば大変だ。諸君、これを防ぐ妙計はないか?」


とのこと。これに許褚きょちょが言いました。


「私に精兵5万をお貸しくだされば、劉備りゅうび呂布りょふの首を取って、丞相じょうしょう曹操そうそう)に献上いたしましょう」


すると荀彧じゅんいくは、


将軍しょうぐん許褚きょちょ)の言葉はいかにも勇ましいですが、はかりごとはご存じないようだ。今、許都きょとみやこうつりの直後でうかつに兵を動かすことはできませぬ。

そこで、私に1つ計略があります。名付けて『2頭の虎がえさあらそはかりごと』。

劉備りゅうびは今、徐州じょしゅうあずかってはいるものの、勅命ちょくめいを受けてはおりませぬ。我が君には(献帝けんていに)勅命ちょくめいたてまつり、劉備りゅうび徐州牧じょしゅうぼくの職をさずけ、それを機会に密書を送って呂布りょふき者にさせるのでございます。

うまくいけば、劉備りゅうびごうの者の助けがなくなって、その内には討ち滅ぼす手がかりもできましょう。もし成功しなければ、呂布りょふの方が劉備りゅうびを手にかけるでございましょう。

これを『二虎競食にこきょうしょくの計』と申します」


これに同意した曹操そうそうただちに勅命ちょくめいい、徐州じょしゅうに使者を派遣して劉備りゅうび征東将軍せいとうしょうぐん宜城亭侯ぎじょうていこうに封じ、徐州牧じょしゅうぼくに任命して、他に1通の書面を送りました。



タカオタカオ

確かに呂布りょふ劉備りゅうび兗州えんしゅうに攻め入ることもあるかもね。徐州じょしゅうの民は曹操そうそううらんでるし。

マリコマリコ

あの大虐殺ね…。呂布りょふさんもリベンジを考えてるかも。

タカオタカオ

しかし敵同志を争わせるのか…。さすが荀彧じゅんいく

王先生王先生

劉備りゅうびが断れば、劉備りゅうびを逆賊にすることもできますしねっ!

関連記事

【037】曹操の父・曹嵩の死と曹操の徐州侵攻

スポンサーリンク


劉備の決断

劉備の決断

画像出典:ChinaStyle.jp

これまでの徐州の状況


王先生王先生

ここで少し、これまでの徐州じょしゅうの状況をおさらいしておきましょう。


陶謙とうけんが亡くなると、陶謙とうけん遺言ゆいごんを受けた糜竺びじく孔融こうゆうの説得により、劉備りゅうび徐州じょしゅうを預かることになりました。

そんなところに、兗州えんしゅうで反乱を起こした呂布りょふ曹操そうそうに敗れて劉備りゅうびを頼って来ると、劉備りゅうびはそんな呂布りょふを受け入れるだけでなく「徐州じょしゅうゆずりたい」とまで言い出します。

ですが、呂布りょふを信用できない関羽かんう張飛ちょうひの反発により、呂布りょふ徐州じょしゅう下邳国かひこく下邳県かひけんを離れて、豫州よしゅう予州よしゅう)・沛国はいこく沛県はいけん小沛しょうはい)に駐屯することになりました。



マリコマリコ

そうだった、劉備りゅうびさんは呂布りょふさんに徐州じょしゅうゆずろうとしてたんだったね。

タカオタカオ

思い出したっ!こりゃ、劉備りゅうび呂布りょふを攻めることはないね。

マリコマリコ

でも、関羽かんうさんと張飛ちょうひさんは呂布りょふさんを嫌ってるから…。どっちなんだろう?

王先生王先生

どっちなんでしょうねぇ(笑)

関連記事

【045】曹操に敗れた呂布が劉備を頼り小沛に駐屯する

劉備が徐州牧に任命される


王先生王先生

さて、曹操そうそう勅使ちょくしを送った頃、徐州じょしゅう劉備りゅうびはというと…。


献帝けんてい許都きょと行幸ぎょうこうされたことを知った劉備りゅうびは、表文ささげぶみたてまつって喜びを申し上げようとしていたところへ、突然、勅使ちょくしが到着したとの知らせがありました。

劉備りゅうびは城外まで出てむかえ入れ、勅命ちょくめい宣下せんげが終わると、酒宴をもよおして使者をもてなします。

そこで使者は、


足下そっか劉備りゅうび)がこのありがたい勅命ちょくめいにあずかったのは、他ならぬ曹将軍そうしょうぐん曹操そうそう)が天子てんし献帝けんてい)に推挙した結果です」


と言い、密書を取り出して劉備りゅうびに手渡しました。

その場で密書を読んだ劉備りゅうびは、


「これはよくよく考えねばなりませぬ」


と答え、散会となって使者を宿舎に案内すると、その夜のうちに皆を集めて協議を始めます。

すると張飛ちょうひは、


呂布りょふは義理を知らぬ奴、殺して悪いことはないっ!」


と主張しましたが、劉備りゅうびは、


「難儀のに我らを頼って来た者を殺したとあっては、義理が通らぬ」


と言い、


「いつまでもお人好しでいられるものかっ!」


と、張飛ちょうひが重ねて言っても同意しませんでした。



タカオタカオ

相談相手が張飛ちょうひっ!?相手間違ってるでしょ(笑)

マリコマリコ

関羽かんうさんは?というかこの場合、どうするのが正解なんだろう?

王先生王先生

どう転んでも曹操そうそうが得をするように考えられた計略ですからね…。

密命を打ち明ける


王先生王先生

次の日、呂布りょふ徐州牧じょしゅうぼく就任のお祝いにやって来ます。


呂布りょふが、


「このたびは、朝廷から恩命を受けられたと聞き、わざわざお祝いに来たのだ」


と言うと、劉備りゅうび謙遜けんそんして謝礼をべました。

するとそこへ突然、抜き身の剣を手にした張飛ちょうひが入って来て呂布りょふいどみかかろうとしたので、劉備りゅうびあわてて張飛ちょうひを押し止めます。

驚いた呂布りょふが、


翼徳よくとく張飛ちょうひあざな)どの、なぜこの私を殺そうとなされるのかっ!?」


と言うと張飛ちょうひは、


曹操そうそうが、貴様は義理を知らぬ奴だから、兄貴(劉備りゅうび)に殺せと言いつけたのだっ!」


と叫びました。

劉備りゅうびは立て続けに張飛ちょうひしかりつけてその場を下がらせると、呂布りょふを奥の間にみちびいてすべての事情を話し、曹操そうそうからの密書を見せます。

呂布りょふはそれを読み終わると涙を流して、


「これは曹操そうそうめが我ら両人を仲違なかたがいさせようとのたくらみに違いありません」


と言いました。そして劉備りゅうびが、


「お気遣きづかい召されるな、私は誓ってそのような不義理なことはいたしません」


と言ったので、呂布りょふは繰り返し礼を言いました。



タカオタカオ

たまらんなぁ、張飛ちょうひいさみ足すぎるよ。

マリコマリコ

呂布りょふさんに打ち明けたってことは、逆賊として曹操そうそうさんと戦うってこと!?

タカオタカオ

まだ分からんよ、とりあえず呂布りょふをなだめただけかもしれん。

王先生王先生

どうでしょうねぇ。
劉備りゅうび呂布りょふを引きめて酒盛りをし、夜になってから帰しました。


スポンサーリンク


駆虎呑狼の計

駆虎呑狼の計

画像出典:ChinaStyle.jp

劉備の真意


王先生王先生

呂布りょふが帰ると、関羽かんう張飛ちょうひがやってきます。


関羽かんう張飛ちょうひの2人が、


「兄上、何ゆえ呂布りょふを討ち果たされぬのですか?」


と問うと劉備りゅうびは、


「これは曹操そうそうが、私と呂布りょふとが力を合わせて攻撃に出ることを恐れて我ら2人を争わせ、自分は『漁夫ぎょふの利』を得ようとする計略だ。その手には乗らぬ」


と、関羽かんう張飛ちょうひに「呂布りょふと争わない理由」を説明します。

すると関羽かんうは「なるほど」とうなずきましたが、張飛ちょうひはまだ、


「俺はあいつを殺して後日のうれいをなくした方が良いと思うのだが…」


と言うので、


「それは大丈夫(立派な男)のすることではない」


と、劉備りゅうびはまた張飛ちょうひをなだめました。



マリコマリコ

劉備りゅうびさん、曹操そうそうさんの計略だって分かってたんですねっ!

タカオタカオ

また頭の中がお花畑になってたのかと思ってた(笑)

マリコマリコ

でもこのままだと曹操そうそうさんに攻められちゃう?

王先生王先生

荀彧じゅんいくも今は兵を動かせないと言っていたので、時間かせぎにはなるでしょうね。

駆虎呑狼の計


王先生王先生

次の日、劉備りゅうびは使者を見送ると、表文ささげぶみをしたためて徐州牧じょしゅうぼく任命の御礼をべます。


劉備りゅうびはまた曹操そうそうへの返事も書きましたが、その内容はただ「しばらく様子を見た上で(呂布りょふに)手を下す」とだけ書かれたものでした。

戻って曹操そうそうに面会した使者が「劉備りゅうび呂布りょふを殺せなかった顛末てんまつ」を報告すると曹操そうそうは、


「計略は失敗したようだ。どうしたものであろうか?」


荀彧じゅんいくたずねます。

すると荀彧じゅんいくは、


「それならば、また1つ計略がございまして、『虎をっておおかみましむるはかりごと』と申します。

袁術えんじゅつの元に秘密の使いをって『劉備りゅうびが秘かに表文ささげぶみたてまつり、(荊州けいしゅう・)南郡なんぐんを攻略しようとしている』と伝えます。袁術えんじゅつはきっと怒って劉備りゅうびを攻撃するに違いありません。そこで我が君は、劉備りゅうび袁術えんじゅつ討伐の勅命ちょくめいを下すのです。

双方攻め合ううちに呂布りょふのこと、必ず二心ふたごころいだくことでしょう。

これを『駆虎呑狼くこどんろうの計』と申します」


と次の策を提案したので、曹操そうそうは大変喜んで、まず袁術えんじゅつに人をり、それから天子てんし献帝けんてい)のみことのりと称して徐州じょしゅうへも使者を出しました。



タカオタカオ

さすが荀彧じゅんいく。すでに次の手を考えていたか…。

マリコマリコ

袁術えんじゅつさんは、これを曹操そうそうさんの計略と見抜けますかね?

タカオタカオ

無理だろうね、劉備りゅうびが攻めて来ると聞けば、多分怒り狂うよ(笑)

王先生王先生

前回は密書による指示。今回は勅命ちょくめいですから、劉備りゅうびも無視するわけにはいきませんしね。


本拠地の許都きょと献帝けんていむかえた曹操そうそうは、徐州じょしゅう劉備りゅうび呂布りょふが手を結んだことを危険視していました。

そこで荀彧じゅんいくは、劉備りゅうび呂布りょふを争わせる『二虎競食にこきょうしょくの計』を献策しましたが、劉備りゅうびに見破られて失敗に終わってしまいます。

すると荀彧じゅんいくは、袁術えんじゅつ劉備りゅうびを争わせる新たな計略『駆虎呑狼くこどんろうの計』を献策し、曹操そうそうはこれを実行に移しました。



王先生王先生

次回は曹操そうそうの計略により、袁術えんじゅつ劉備りゅうびの戦いが始まってしまいます。

次回

 【053】袁術 vs 劉備。張飛が曹豹を鞭打ち、呂布が徐州を奪う

三国志演義の解説を順番に読もう!

 三国志演義教室【目次】