公孫瓚との講和が成立したことで袁紹は、韓馥をだまして手に入れた冀州をようやく我がものにすることができました。これを見た袁術は袁紹に援助を求めますが…。
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目次
袁術(えんじゅつ)の陰謀
前回は、袁紹と公孫瓚の戦いが董卓の仲裁で終わったところまででしたよね。
あと、劉備さんと趙雲さんの出会いもありましたよねっ!
そうですね。
今回はまた舞台が変わって、袁術、孫堅、劉表に関わるお話しになります。
ご確認
この記事は『三国志演義』に基づいてお話ししています。正史『三国志』における孫堅と劉表の戦いについては、こちらをご覧ください。
袁紹に軍馬をねだる
さて、十八路諸侯が解散した後、袁術は南陽郡にいました。
えっと…、南陽郡ってどこでしたっけ?
では、現在の勢力図を確認してみましょう。
主な群雄の勢力図(191年)
※ 『三国志演義』における群雄勢力図は、正史『三国志』とは異なります。正史『三国志』の群雄勢力図については下記の関連記事をご覧下さい。
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ふむふむ、なるほど。分かりましたっ!ちょうど真ん中ですねっ!
袁紹が冀州を手に入れたことを知った袁術は、袁紹に馬千匹を譲って欲しいと申し入れました。
ずうずうしいなぁ、袁術は(笑)
そうですね!しかも袁紹がこの申し出を断ったので、袁術と袁紹の仲が悪くなってしまったんです。
袁紹さんもケチですね、2人は兄弟でしょ?
どっちもどっちですね(笑)
劉表に兵糧をねだる
すると袁紹に馬を断られた袁術は、今度は劉表に兵糧を譲って欲しいと申し入れます。
懲りないヤツだなぁ。どうせ劉表も断るでしょ(笑)
その通りです。そしてこれを恨みに思った袁術は、孫堅に劉表を攻めるように手紙を送りました。
先頃劉表があなたの行く手を遮ったのは、わが兄・袁紹の謀略です。そして今、袁紹は劉表と結んであなたの領土を狙っています。
孫堅どのは速やかに劉表を討つべきです。私はあなたのために袁紹を討ちましょう。
う〜ん…。自分の恨みのために孫堅さんを利用しようとしてるのね!
劉表が孫堅と戦ったのが袁紹の謀略なのは本当だけどな(笑)
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孫堅の出陣
画像出典元:中国サイトCtrip
孫堅の出陣
袁術の手紙を受け取った孫堅は、程普・黄蓋・韓当たちを集めて話し合います。
孫堅のことだから、ヤル気満々なんだろうな。
そうですね!程普が袁術を警戒するように言いましたが、孫堅は出陣を決定しました。
もう…。董卓さんを倒すんじゃなかったの?
十八路諸侯はもう解散したからね!関係ないんじゃない?
出陣を決定した孫堅は、黄蓋に命じて長江の河岸で出陣の準備を始めます。
孫静の忠告
ここで少し、孫堅の親族についてお話ししておきましょう。
孫堅には3人の夫人と7人の子がいました。()内は字。
呉夫人・姉
- 孫策(伯符)
- 孫権(仲謀)
- 孫翊(叔弼)
- 孫匡(季佐)
呉夫人・妹
- 孫朗(早安)
- 孫仁【娘】
兪氏
- 孫韶(公礼)
※これは『三国志演義』での血縁関係であり、正史『三国志』の血縁関係や名前と異なる部分があります。
孫堅って、3人も奥さんがいたのか。
娘の孫仁って、もしかして孫尚香のこと!?
そうですよ。孫尚香と言うのは京劇で使われている名前ですね。
『レッドクリフ』では大活躍してたねっ!
いよいよ出陣という時、孫堅の弟の孫静は、孫堅の子らを引き連れて進み出ると、平伏して言いました。
「今、董卓は権力を欲しいままにし、国は乱れて割拠しております。このような時に、わずかな恨みのために大軍をおこすことは道理にかないません!」
ですが孫堅は、「弟よ、もう何も言うな」と言って考えを変える気はありません。
すると、長男の孫策が進み出て言いました。
「父上がどうしても出陣なさると言うのなら、私もお供させて下さい」
孫堅は孫策の希望を聞き届けると、一緒に船に乗り込み最初の目標の樊城に攻め寄せました。
いよいよだね!
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孫堅の快進撃
矢を借りて黄祖を破る
さて、劉表の方でも孫堅の出陣に気づき、配下の黄祖を川岸に伏せていました。
孫堅の船団が岸辺に近づくと、黄祖は一斉に矢を射かけます。
孫堅は各船に「軽はずみなことはするな」と命じ、みな船の中に身を伏せさせて、敵の前を行ったり来たりさせました。
これを3日間くり返し、何十回も岸に近づくと、黄祖はその度に矢を射かけて来たので、船に刺さった矢を数えてみると数十万本にもなっていました。
孫堅はついに攻撃の命令を下すと、手に入れた矢を一斉に射かけます。
矢を撃ちつくしてしまっていた黄祖軍は敵の攻撃を支えきれず、退却を始めました。
これ、『レッドクリフ』で孔明さんがやったのと同じだっ!
本当だっ!「草船借箭の計」だね。草船じゃないけど(笑)
そうですねっ!
孫策の初陣
黄祖の兵が引いたのを見た孫堅は上陸を開始します。
孫堅が程普・黄蓋・韓当を上陸させて3方向から攻めたてると、黄祖の軍はたまらず総崩れになり、樊城を捨てて鄧城に逃げ込みました。
すると孫堅は黄蓋に船を守らせ、今度は自分で兵を率いて鄧城に進軍します。
樊城と鄧城
体勢を立て直した黄祖は城外に布陣し、両軍が対峙しました。孫堅のとなりには、槍を手に甲冑に身を固めた孫策の姿があります。
「江東のネズミめが、よくも皇室の御一門の領地に侵入しおったなっ!」
黄祖はこう罵ると、配下の張虎を挑ませました。孫堅の陣からは韓当が迎え撃ちます。
打ち合うこと30合あまり、劣勢になった張虎を救うため、黄祖の陣から陳生が駆け寄ります。
これを見た孫策は、持っていた槍を預けて弓を手に取ると、みごと陳生の顔を射貫きました。
これに一瞬気を取られた張虎の隙を見逃さず、韓当が一刀のもとに張虎を切り倒すと、今度は程普が黄祖に向かって戦いを挑みます。
お〜っ、孫策さん凄いっ!
孫策は強いよっ!
これはかなわないと見た黄祖は、兜を脱ぎ捨ててまっしぐらに逃亡しました。
蔡瑁の敗北
黄祖は劉表に謁見して孫堅軍の強さを伝えます。
劉表はあわてて蒯良を呼んで相談しました。
「今は防備を固め袁紹に援軍を求めましょう。援軍が到着すれば、敵の包囲も解けるでしょう」
蒯良がこう進言すると、蔡瑁が進み出て言います。
「子柔*1どのの策は座して死を待つようなもの。不才ながら私に一軍をお貸しいただければ、孫堅の軍を撃ち破ってご覧に入れましょう」
そして、劉表に出陣を許された蔡瑁は、峴山に布陣しました。
蔡瑁を見つけた孫堅が、
「あれは劉表の後妻の兄だっ!誰かあ奴を生け捕りにして来る者はいないか?」
と呼ばわると、鉄脊蛇矛を引っさげた程普が進み出て蔡瑁に挑みかかります。
蔡瑁は程普に散々に打ち負かされ、多くの兵を失って這々の体で逃げ帰っていきました。
蒯良は自分の作戦に従わずに大敗北を招いたと、軍律に照らして死罪にするように主張しましたが、蔡瑁の妹を娶ったばかりだった劉表は刑罰を与えようとしませんでした。
甘いなぁ、劉表は(笑)
負けたら死罪なんて、そしたら恐くて誰も戦えないよ。
そうですね。劉表も許可を出したわけですし、死罪はやり過ぎです(笑)
そうか…。孫堅、死ぬのかと思ったら快進撃やんっ!
脚注
*1 蒯良(かいりょう)の字(あざな)
公孫瓚との講和が成立したことで、兵糧や物資に困窮していた袁紹は、韓馥をだまして手に入れた冀州をようやく我がものとします。
そんな中、袁紹と同じく兵糧や物資に困窮していた南陽の袁術は、袁紹と劉表に軍馬と兵糧の援助を願い出ますが、にべもなく断られてしまいました。
これを恨みに思った袁術は、孫堅に劉表を討つようにそそのかします。
袁術の謀にまんまと乗せられて荊州に攻め入った孫堅ですが、連戦に連勝を重ね、劉表の本拠地・襄陽に迫る勢いを見せていました。
次回は、孫堅が劉表の本拠地・襄陽に迫ります。