冀州を分け合う約束をして袁紹に協力した公孫瓚。ですが冀州を手に入れた後も、袁紹からの連絡はありませんでした。
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目次
磐河(ばんが)の戦い
前回は、袁紹が韓馥をだまして冀州を手に入れたところまででしたよね。
袁紹さんひどいよ。韓馥さんは袁紹さんに兵糧まであげてたのに…。
そうですね。
今回はその冀州をめぐって、袁紹と公孫瓚の間で争いが起こります。
ご確認
この記事は『三国志演義』に基づいてお話ししています。正史『三国志』における袁紹と公孫瓚の争いについては、こちらをご覧ください。
反董卓連合の崩壊。袁紹が孫堅を攻め、公孫瓚は河北に覇を唱える
【袁紹 vs 公孫瓚】界橋の戦い。白馬義従を破った麹義の底力
袁紹(えんしょう)の裏切り
さて、袁紹はどのようにして韓馥から冀州をだまし取ったのか、覚えていますか?
もちろんっ!袁紹が公孫瓚に冀州を攻めさせて、怯えた韓馥が袁紹を頼って冀州を譲ったんだよ!
たしかその時、袁紹さんは公孫瓚さんと冀州を分け合う約束をしてましたよね。
その通りです。公孫瓚は領土を分け合う話し合いをするため、袁紹の元に弟の公孫越を派遣しました。
なるほどっ!冀州の分け方をめぐって争いが起こるんだな?
もっとヒドいですよ。袁紹は公孫越を追い返すと、董卓軍を名乗って公孫越を襲い、殺害してしまいました。
ヒドすぎる!こんな人が十八路諸侯の盟主をやっていたなんて…。
袁紹には公孫瓚と冀州を分け合う気はないってことか。
趙雲(ちょううん)登場!
袁紹に弟を殺された公孫瓚は激怒して、軍勢を率いて冀州に攻め込みます。
そりゃ公孫瓚もだまされないよな(笑)
すると袁紹も出陣し、磐河という河をはさんで両軍はにらみ合いとなりました。
まず公孫瓚が橋の上に進み出て、約束を破った袁紹を非難します。
すると袁紹は、「韓馥が冀州を譲ったことはお前とは関係ない」と言い放ち、文醜を挑ませました。
文醜の攻撃を受けきれなくなった公孫瓚は陣に逃げ帰ろうとしますが、文醜は行く手をふさぐ公孫瓚の将たちをなぎ払い、なおも公孫瓚を追っていきます。
そして、公孫瓚が弓も矢も捨て、兜さえも脱ぎ捨てて必死で馬を走らせていたところ、馬の前足が折れて落馬してしまいました。
公孫瓚さんが危ないっ!劉備さんたちはどこっ!?
劉備は平原国の太守になったからね。ここにはいないよ。
そうですね。
ですが、文醜が今まさに槍で突きかかろうとしたその時、1人の若武者が立ちはだかります。
その若武者がまっすぐに馬を飛ばして文醜に突きかかっていったので、その間に公孫瓚はなんとか坂の上に逃れることができました。
若武者と文醜は50〜60合打ち合っても勝負がつきません。
そこで、公孫瓚の配下たちが追いついてきたのを見た文醜は、あきらめて陣に帰っていきました。
難を逃れた公孫瓚は、若武者に名前を尋ねます。
「私は(冀州・)常山郡・真定県の者で、姓は趙、名は雲、字は子龍と申します。
もとは袁紹に仕えていましたが、袁紹の振る舞いには君(皇帝)への忠義も、民を救わんとする心もないのを見て幻滅し、あなた様の元に馳せ参じました」
これを聞いた公孫瓚は大いに喜んで、ともども陣に帰って軍を整えました。
趙雲さんっ!
映画の『レッドクリフ』にも出てたから、マリコちゃんも知ってるね。
うん。でも劉備さんじゃなくて、はじめは公孫瓚さんに仕えたんだ…。
そうなんですよ。
ではここで、趙雲について簡単にご紹介しておきましょう。
趙雲の特長と略歴
姓は趙、名は雲、字は子龍。冀州・常山郡・真定県の人。
身長約184cm。眉太く眼が大きく、大きな顔でアゴが割れている威風堂々とした風貌をしています。
この時袁紹に仕えていましたが、その身勝手な振る舞いを見て袁紹を見限り、公孫瓚の元に馳せ参じました。
多くのゲームではシュっとしたイケメンに描かれてるけど、横山光輝『三国志』の趙雲の方がイメージに近いのかな。
そうなんだ?
うん。『ドカベン』みたいな顔してる(笑)
そうなんだ。『レッドクリフ』の趙雲も細身のイケメンでしたね!
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界橋の戦い
画像引用元:『完訳 三国志(第1巻)』小川環樹・金田純一郎訳(岩波文庫)
白馬陣の敗北
さて、体勢を整えた公孫瓚は翌日、もう一度袁紹に挑みます。
公孫瓚は橋の手前に陣取ると、配下に加わったばかりの趙雲を後方に控えさせ、厳鋼を大将にして、その前方に羌族に恐れられた精強な白馬部隊(白馬陣)を二手に分けて両翼の形に布陣させました。
対する袁紹は、顔良と文醜にそれぞれ1,000人の石弓隊を率いて白馬部隊に当たらせ、麹義には800人の射手と15,000人の歩兵を与えて中央に陣取らせました。
袁紹自身は騎兵歩兵数万を率いて後詰めとなります。
界橋の戦い
あの、羌族って何ですか?
羌族は、よく後漢の領内に侵攻してくる異民族だよ。
その通りです。その討伐に当たった公孫瓚の白馬部隊が非常に強かったので、彼らに恐れられていたんですね。
両軍が対峙してから2時間余りが経過しても、袁紹軍に動きがないことにしびれを切らした厳鋼は、全軍に突撃を命じます。
ですが、麹義は射手を大楯の後ろに伏せたまま動こうとしません。
そして厳鋼の部隊が間近まで迫った時、麹義隊の800人の射手が一斉に石火矢を射かけました。
これにより公孫瓚の軍は総崩れになり、厳鋼は襲い来る麹義に一刀のもとに切り殺されてしまいました。
白馬陣、全然強くないな(笑)
実は、麹義は長らく涼州にいて、羌族の騎馬戦法を熟知していたんです。
なるほど。麹義さんの方が一枚上手だったんですね。
袁紹軍は公孫瓚軍の本陣にまで迫り、「帥」の字が書かれた旗が倒されたのを見た公孫瓚は、またも馬首を返して逃走します。
そして、麹義が公孫瓚を追おうとしたその時、後方に控えていた趙雲が打ちかかり、またたく間に麹義を突き殺しました。
おぉ〜っ!趙雲さんっ!
頼りになるねぇ(笑)
そうですねっ!
公孫瓚(こうそんさん)の逆襲
麹義を討ち取った趙雲がそのまま単騎で袁紹軍に突入すると、今度は袁紹軍が総崩れになります。
この時袁紹は、田豊と少数の護衛だけを連れて、味方が敵軍を追い立てる様子を高見から見物していました。
そこへ突然目の前に趙雲が現れて、数人の護衛を突き倒したのだからたまりません。
「今のうちに土塀の中へ隠れて下さい!」
と言う田豊に、袁紹は兜を地面に投げ捨てて言いました。
「大丈夫たるもの、戦陣に切り死にすることこそ本望だ。逃げも隠れもせんっ!」
これを見た護衛たちは死にもの狂いで戦い、やがて顔良や袁紹軍の本隊が駆けつけたので、趙雲もあきらめて撤退しました。
袁紹め、真っ先に逃げるかと思ったらなかなか根性あるな。
そうですね。この時袁紹が逃げていたら、袁紹軍は総崩れになっていたでしょう。
予期せぬ援軍
さて、今度はまた袁紹が攻勢に出ます。
趙雲が橋のところまで撤退すると、袁紹は兵に号令して、先頭に立って公孫瓚軍を攻めたてます。
そして袁紹軍が橋を越えたちょうどその時、山の向こうからにわかに鬨の声がわき起こり、一隊の軍勢があらわれました。その先頭に見えるのは、あの劉備、関羽、張飛の3人です。
おぉ〜っ!劉備さんっ!でもなんで!?
公孫瓚と袁紹が戦っているのを知って、平原国から援軍に駆けつけたんですね。
劉備、関羽、張飛の3人が自分に向かってまっすぐに駈けてくるのを見た袁紹は、仰天して手にした宝刀も落としたまま、もと来た橋を渡って一目散に逃げ出しました。
公孫瓚は逃げる袁紹を深追いせず、陣に戻って3人に礼を言うと、劉備に趙雲を紹介しました。
これ以降、袁紹は陣を堅く守って出撃しなくなります。
袁紹は少なくとも関羽の強さは知ってるからなぁ。おいそれとは手出しできないよな。
趙雲さんもいるしねっ!
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戦いの終わり
董卓による講和
袁紹と公孫瓚がにらみ合って一月が経った頃、そのことを董卓に知らせた者がいました。
すると、側にいた李儒が一計を案じます。
「袁紹と公孫瓚は磐河で争っておりますが、ここは一つ、天子の勅使を遣わせて和解させてはいかがでしょう。
そうすれば2人ともそのことを恩に感じ、必ずや太師さま(董卓)に付き従いましょう」
これを聞いた董卓は「それは名案だ!」と言うと、早速太傅の馬日磾と太僕の趙岐に勅書を持たせて2人の元に送り込みます。
すると、袁紹も公孫瓚も詔に従って戦いをやめ、公孫瓚はその日のうちに軍を引き揚げました。
ちなみに勅使とは皇帝からの使者のことです。
ずる賢いなぁ、李儒さんは。
てか董卓のこと忘れてたわ(笑)董卓ほっといて何やってんだよ!
趙雲との別れ
戦いが終わると、劉備、関羽、張飛の3人は任地の平原国に帰ることになります。
あいさつを交わしてから1ヶ月あまり、劉備と趙雲は意気投合し、お互い離れがたい気持ちになっていました。
別れ際、趙雲が劉備に言いました。
「私は公孫瓚を英雄だと思って仕えてみましたが、近頃の振る舞いを見ると、どうやら袁紹と同列の輩のようです…」
するとこれを聞いた劉備は、
「今のところは辛抱してお仕えなされ。またいつかお会いする日もあるでしょう」
と言い、2人手を取り合って涙ながらに別れました。
えぇ〜!2人離れ離れになっちゃうの!?
劉備も兄貴分の公孫瓚の部下を引き抜くわけにはいかんでしょ。
何はともあれ袁紹と公孫瓚の冀州をめぐる争いは、董卓の仲介による和睦で幕を閉じました。
袁紹が公孫瓚との約束を反故にしたことから始まった「磐河の戦い」は、意外にも董卓の仲介によって幕を閉じ、結局のところ冀州は袁紹が領有することになりました。
一方、この戦いに援軍として参戦した劉備は、後に自軍の中核を担う1人となる趙雲と出会いました。
ですが、この趙雲が劉備に仕えることになるのは、もう少し後のことになります。
次回はまた、舞台が変わって孫堅のお話しになります。
次回
逆襲の孫堅!袁術の陰謀により劉表を攻めた孫堅軍の怒濤の快進撃