董卓討伐を掲げて結集した十八路諸侯は、袁紹を盟主に立てるといよいよ汜水関に向けて進撃を開始します。
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目次
汜水関(しすいかん)の戦い

前回は董卓討伐を掲げる十八路諸侯が集結して、最初の目標を汜水関に決めたところまででしたよね!

袁紹さんが盟主に、袁術さんが兵糧を管理することになったんですよね!

そのとおりです。
今回はついに、十八路諸侯が董卓に攻撃を開始します。
ご確認
この記事は『三国志演義』に基づいてお話ししています。正史『三国志』における汜水関の戦いについては、こちらをご覧ください。
董卓軍の敗因は呂布の裏切りだった!?陽人の戦いと孫堅の洛陽入り
孫堅が先鋒となる

十八路諸侯の盟主・袁紹は、最初の攻撃目標を汜水関に決め、先鋒を誰にするかと諸侯に問いました。
すると、1人の男が進み出て先鋒を志願します。長沙太守の孫堅です。
これに袁紹は、「武勇の誉れ高い文台(孫堅の字)どのなら心配ない」と、孫堅を先鋒に任命しました。

孫堅さんっ!
張飛さんとか、すぐ志願しそうなのにね。

劉備は今、公孫瓚の配下だからね。それにはまず、公孫瓚が志願しないとっ!(笑)

そうですね。
劉備、関羽、張飛の3人も、もちろん活躍しますよ。もう少し待ってくださいねっ!

はいっ!
ところで、汜水関ってどういうところなんですか?

良い質問ですねっ!
中国では、日本と違って町全体が城壁で囲まれていて、町自体が城の役目を持っています。
ですが、汜水関はそういった城とは違い、洛陽を守るためにつくられた、防衛設備を持った関所のような役目を持っていました。

なるほど。
洛陽を攻めるためには、まず汜水関の敵を倒さないといけないんですねっ!

その通りです。
呂布と華雄が先陣を競う

孫堅軍が攻めて来たことに気づいた汜水関の守将は、すぐに洛陽にいる董卓に報告しました。
董卓は権力を握って以来、夜ごと宴会を開いていましたが、孫堅軍の来襲を聞いて慌てて将軍たちを集めます。
すると、温侯・呂布が進み出て孫堅迎撃の任務に名乗りを上げました。

呂布さんっ!

いきなり強敵だな…。

董卓が上機嫌で呂布を大将に任命しようとした時、もう1人の男が名乗りを挙げます。
「鶏を割くに、焉んぞ牛刀を用いんやっ!孫堅ごときに温侯どののお手を患わせることはありませんっ!」
声がするほうを見ると、
身の丈9尺(約210cm)、虎の体、狼の腰、豹の頭に猿の肘。関西の人、華雄という男でした。
董卓はもっともだと思い、華雄を驍騎校尉に任命して、李粛、胡軫、趙岑を副将につけ、孫堅軍を迎え撃たせました。

うわぁ〜!また強そうな人が出てきた…。

猿の肘…。弱そう(笑)

これは、猿のように長い肘という例えですね。戦うためには有利ですよ(笑)

驍騎校尉は確か、曹操さんが任命された官位ですよね。

曹操は裏切ったからな。クビでしょ(笑)
鮑信の抜け駆け

それでは戦場に目を向けてみましょう。
孫堅が出発すると、十八路諸侯の1人・済北相の鮑信は、「自分が一番手柄を立ててやろう」と、弟の鮑忠に3,000の騎兵・歩兵を与え、先回りをして汜水関に押し寄せました。
500の鉄騎兵を率いて打って出た華雄は、敵軍の中に鮑忠を見つけると、
「賊将、逃げるなっ!」
と大声で怒鳴りつけます。
華雄に恐れをなした鮑忠は慌てて逃げようとしますが、華雄に一刀のもとに斬り倒されてしまいました。

ダメじゃん、鮑信さん。

いるんだよなぁ、こういう奴…。袁紹がしっかり抑えないと。

そうですね。戦勝の報告を受けた董卓は、華雄を都督に任命しました。
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袁術の陰謀
孫堅の勝利

さて、ここで孫堅の軍が汜水関に到着します。
孫堅は、
- 鉄脊の蛇矛の使い手・程普
- 鉄鞭の使い手・黄蓋
- 大薙刀の使い手・韓当
- 両刀の使い手・祖茂
の4人の大将とともに、汜水関のすぐ近くに陣取ります。

あ〜っ!黄蓋さん知ってるっ!

『レッドクリフ』でも先陣を切ってたね。

黄蓋さんは、孫堅さんの時から仕えてたんですねっ!

そうですね。
孫堅軍がやって来たことに気づいた華雄は、今度は副将の胡軫に5,000の兵を与えて迎え撃たせました。
胡軫が汜水関から打って出ると、孫堅軍のほうでは程普が蛇矛を構え、まっすぐに馬を飛ばして胡軫に戦いを挑みます。
すると程普は、数合と打ち合わぬ間に自慢の蛇矛で胡軫のノドを突き、胡軫を倒してしまいました。
これを見た孫堅は、号令をかけて汜水関に攻めかかります。
ですが、汜水関からは矢や石が雨あられのように降りそそぎ、簡単には攻め落とせそうにありません。
孫堅は被害が大きくならないように一度兵を退いて、袁紹に胡軫を討ち取った報告をし、袁術に兵糧の補給を願う使者を送りました。

ひゅ〜っ!程普もなかなかやるねぇ、胡軫が弱かったのか?(笑)

孫堅さんも無理に攻めたりしないで、戦いのプロって感じですねっ!
袁術の陰謀

孫堅から兵糧を催促する使者が来ると、袁術に耳打ちする者がいました。
「孫堅は『江東の猛虎』と呼ばれた男です。
もし孫堅がこのまま勝ち続け、洛陽を落として董卓を殺すようなことがあれば、まさに『狼を追い払って虎を招く』ようなもの。
ここは兵糧を送らずにいれば、孫堅の力を削ぐことができるでしょう」
すると袁術は、この言葉に従って孫堅からの兵糧の要求を無視してしまいました。

もう!仲間を疑ってどうするのっ!?

まあ、十八路諸侯なんて言っても、みんな自分のことしか考えていないヤツらの集まりだからね。

それこそ「腹が減っては戦はできぬ」だよ。頑張ってる孫堅さんがかわいそう…。

本当にそうですね。
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孫堅の敗北
華雄の逆襲

さて、兵糧の補給を止められた孫堅軍は、見る見るうちに疲弊していきました。
孫堅軍に放った密偵からその様子を伝え聞いた副将の李粛は、今が好機と一計を案じます。
その夜、李粛は1隊を率いて汜水関を出ると、孫堅軍に気づかれないように背後に回り込み、鬨の声をあげながら攻めかかりました。
驚いた孫堅が応戦しようとしたところ、なんと正面からも華雄の部隊が攻め寄せてきたので、孫堅軍は大混乱に陥ってしまいます。

ひどいな。孫堅は兵糧が来ない時点で兵を引くべきだったんだよ。

きっとここに、劉備さんたちが助けに来そうな気がするっ!

ありそうだけど来ないよ(笑)

孫堅軍は奮戦したのですが、それぞれ敵を突破して逃げるのが精一杯でした。
祖茂の死

そして、なんとか包囲を突破した孫堅に、華雄はしつこく追って来ます。
孫堅に寄り添って馬を走らせていた祖茂が、孫堅に言いました。
「我が君の頭巾は目立ちます。私にお貸し下さい」
孫堅はいつも赤い頭巾をかぶっていたので、敵軍は赤い頭巾を「孫堅の目印」としていました。祖茂は、自分が孫堅の赤い頭巾をかぶることで、囮になることを提案したのです。
孫堅は祖茂の提案を受け入れ、祖茂の兜と自分の頭巾を交換して二手に分かれました。
すると、華雄軍はみごとにだまされて孫堅の頭巾をかぶった祖茂を追ったため、孫堅は無事逃げのびることができました。

忠臣だね、祖茂は。

祖茂さんも無事に逃げられると良いけど…。
しばらくすると祖茂の馬も息が上がり、華雄に追いつかれるのも時間の問題となります。
祖茂は焼け残った民家の柱に孫堅の頭巾を掛けると、自分は林の中に入って身を隠しました。
そして、追いついた華雄が柱に近づいて頭巾を手にしたその時、祖茂が華雄を斬りつけようと林の中から躍り出ますが、一瞬早く物音に気づいた華雄に一刀のもとに斬り殺されてしまいました。

じっとしてれば助かったかもしれないのに…。

ああぁ…。祖茂さん、あなたのことは忘れません。

祖茂を討った華雄は戦いを続け、夜が明ける頃には汜水関に引き上げていきました。
董卓討伐を掲げて集まった十八路諸侯ですが、緒戦は敵将・胡軫を討ち取ったものの、済北相・鮑信の抜け駆けや袁術の陰謀などの不和が目立ち、大敗北を喫してしまいました。
また、ちりぢりとなった程普、黄蓋、韓当と合流した孫堅は、祖茂を失った悲しみに震えながら、袁紹に敗北の報告をしました。

次回は、十八路諸侯の攻撃を防いだ華雄が、ついに攻勢に出ます。
次回
【020】温酒斬華雄:関羽が猛将・華雄を斬り、十八路諸侯の危機を救う