劉備との約束を破って呂布に下邳県を奪われた張飛は、劉備と関羽の前で自害しようとしますが…。
スポンサーリンク
劉備が張飛を許す
画像出典:ChinaStyle.jp
前回は荀彧さんの『駆虎呑狼の計』で、袁術さんが徐州に攻め込んだところでしたよね。
そこで劉備は「酒を飲まない」という約束で、張飛に下邳県の守備を任せたんだ。
でも結局張飛さんはお酒を飲んで、呂布さんに下邳県を奪われちゃった…。
それで劉備たちのところへ逃げ戻った張飛が、自害しようとしたところで終わったんでしたよね。
そうですね。ちなみに今回から『三国志演義』の第15回のお話になります。
ご確認
この記事は『三国志演義』に基づいてお話ししています。正史『三国志』における「袁術の徐州侵攻」については、こちらをご覧ください。
関連記事
それでは今回のお話を始めましょう。
張飛が剣を抜き放ち、自分の首に当てて自害しようとすると、劉備はいきなり張飛を抱きとめて、
「古人の言葉にも『兄弟は手足のごとく、妻子は衣服のごとし』とある。衣服は破れても縫い付けることができるが、手足がちぎれてしまえばつなぎ直すことはできない。
我ら3人は桃園に兄弟の契りを結んだ時から、『同じ日に生まれずとも、願わくば同じ日に死のう』と誓った仲ではないか。城も家族もなくしはしたが、兄弟が命を縮めるのを見殺しにはできぬ。
元々あの城も我らのものだったわけではない。家族は捕らえられたが、おそらく呂布は害を加えることはないだろうから、また救い出すこともできるだろう。
弟よ、1度の失敗くらいで命を粗末にするとは何としたことだ」
と言って大声で泣いたので、関羽と張飛の2人も一緒になってむせび泣きました。
まあ、死ぬこたぁない。
うんうん。それよりも、これからの方が心配…。
そうですね。劉備たちは帰るところがなくなってしまったわけですから。
スポンサーリンク
袁術の誘い
画像出典:ChinaStyle.jp
さて、呂布が下邳県を奪ったことは、袁術にも伝わります。
呂布が徐州を襲撃したことを知った袁術は、その夜のうちに呂布に使者を送り、
- 兵糧:5万石
- 馬:500頭
- 金銀:1万両
- 反物:1000匹
を贈る約束をして、共に劉備を挟み撃ちにしようと持ちかけました。
すると呂布はこれに大変喜んで、高順に5万の兵を与えて劉備の背後を襲わせます。
ですが劉備は、雨模様の悪天候を幸いに盱眙県を放棄して、さらに東の広陵県に向かったので、高順が盱眙県に到着した時には、劉備軍はすでに立ち去った後でした。
そこで高順は袁術の将軍・紀霊に面会し、約束の品々を要求しましたが、紀霊は、
「まずはお引き取り願いたい。主君(袁術)に会った上でお計らいいたそう」
と言うので、仕方なく高順は紀霊と別れて帰陣し、呂布に紀霊が言ったことをそのまま伝えました。
そして、呂布がいぶかしく思っているところへ、急に袁術からの書面が届きます。
「高順どのは来てくれたが、劉備を撃ち破ることはできなかった。劉備を虜にしたら、その時こそ約束の品をお送りしよう」
これに「袁術が約束を違えた」と腹を立て、今度は袁術を攻めようとする呂布に、陳宮が言いました。
「いやいやなりませぬ。袁術は寿春県を根城にして、兵も多く食糧も豊かです。
それよりは、劉備を呼び戻して小沛を守らせ、我らの助けにするのが良いでしょう。後日、劉備を先手としてまず袁術を破り、それから袁紹を撃ち破れば、天下に恐いものはなくなります」
そこで呂布は、この言葉に従って劉備を呼び戻す使者を送ることにしました。
呂布さん騙されたの?最初と条件が違うってこと?
呂布も城を奪っておいてまた劉備を味方につけようなんて、都合良いなあ。
そうね。でも劉備さんは今、帰るところもなくなってるから…。
それも呂布のせいなんですけどね(笑)
前回、曹操が『駆虎呑狼の計』を仕掛けた時、袁術は荊州・南陽郡にいましたが、ここで突然「寿春県を根城にしている」となっています。
正史『三国志』ではこれより以前、袁術は曹操に敗れて荊州・南陽郡から揚州・九江郡・寿春県に拠点を移していたので、ここで辻褄を会わせたのでしょう。混乱しないように注意しましょう。
関連記事
スポンサーリンク
劉備が小沛に入る
画像出典:ChinaStyle.jp
では、広陵県に向かった劉備の様子を見てみましょう。
呂布に下邳県を奪われた劉備は広陵県に向かいますが、袁術軍の夜討ちを受け、兵の大半を失って敗走しました。
そこでちょうど呂布の使者に出会った劉備は、書面を読んで大喜びします。
この時関羽と張飛は、
「呂布は義理知らずなので、信用できません」
と口を揃えて言いましたが、劉備は、
「向こう(呂布)が厚意を寄せてくれているのに、いつまでも疑っていることもあるまい」
と言って、徐州に戻ることにしました。
すると呂布は「劉備がまだ自分を疑っているだろう」と思い、先に人を遣って劉備の家族を送り返します。
甘夫人と糜夫人は劉備と再開すると、呂布が屋敷の門に番人をつけて、他人が出入りしないようにし、また、始終召使いに贈り物を届けさせて、粗略な扱いをしなかったことを詳しく話して聞かせました。
これを聞いた劉備は、関羽と張飛に向かって、
「どうだ、私が言った通りじゃないか」
と言い、城内に入って呂布に謝礼を述べに行きましたが、張飛はまだ呂布を憎んでいたので劉備に同行せず、2人の兄嫁を護衛して小沛に向かいました。
劉備が面会して礼を言うと、呂布は、
「儂は城が欲しいわけではなかった。弟御の張飛どのが酒の上で人を殺したりされるので、もしものことがあってはいけないと思い、守備に来たのです」
と言いました。すると劉備は、
「私は以前から足下(あなた)にお譲りしようと思っていたところでした」
と答えます。
そこで呂布は、わざと「元通り劉備に城を返そう」と言ってみせましたが、劉備はそれを固く断って、小沛に戻ってそこに兵を留めました。
ですがやはり、関羽と張飛の2人は心中穏やかではない様子なので、
「不運とあきらめてしばらく様子を見て、また時機が来るのを待とうではないか。運命と争っても仕方がない」
と言って2人をなだめ、ここに呂布と劉備はまた手を結びました。
呂布さんは、劉備さんの奥さんたちを守ってくれてたんですね。
使い道があると思ったんだろうね。
とりあえずこれで、劉備さんも一安心と思って良いのかな?
まぁ、呂布のせいでピンチになったんだけどね(笑)
そうですね。ここで一旦、徐州のお話は終わります。
呂布が劉備から下邳県を奪うと、劉備を攻めていた袁術は、呂布に贈り物を約束して劉備を攻めるように要請しました。
この話に乗った呂布は劉備を攻めますが、袁術は約束を守らなかったので、これに激怒した呂布はもう一度劉備と手を結び、劉備を小沛に駐屯させます。
これで、劉備と呂布を仲違いさせるという荀彧の計略は失敗に終わりましたが、両者の間にはわだかまりが残りました。
次回は、舞台が変わって孫堅の息子・孫策のお話になります。