曹操(そうそう)による一世一代の董卓(とうたく)暗殺は失敗に終わってしまいました。危機一髪のところで洛陽(らくよう)から逃亡した曹操(そうそう)の、その後を追っていきましょう。

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中牟県令・陳宮


マリコマリコ

前回は董卓(とうたく)さんの暗殺を引き受けた曹操(そうそう)さんが、暗殺に失敗して洛陽(らくよう)から逃げ出したところまででしたよね。

タカオタカオ

大きなこと言って引き受けたのに大失敗っ!(笑)

王先生王先生

そうですね!
今回は、その逃亡する曹操(そうそう)についてお話しします。

ご確認

この記事は『三国志演義』に基づいてお話ししています。正史『三国志』における曹操(そうそう)の逃亡劇については、こちらをご覧ください。

どれが真実!?実は3通りあった曹操の「呂伯奢一家惨殺事件」

捕らえられた曹操


王先生王先生

間一髪で洛陽(らくよう)を脱出した曹操(そうそう)は、故郷の豫州(よしゅう)・沛国(はいこく)・譙県(しょうけん)に向かっていました。


豫州沛国譙県

豫州(よしゅう)・沛国(はいこく)・譙県(しょうけん)


マリコマリコ

あれ?
この時代、曹操(そうそう)さんの家族や親戚も罪に問われるんですよね。

王先生王先生

そうですね。
当時、罪を犯(おか)した者の親族は連帯責任として罰せられました。

タカオタカオ

とりあえず故郷に帰って、家族も含めこれからのことを考えないとな。

王先生王先生

さて、故郷の譙県(しょうけん)に向かう曹操(そうそう)ですが、途中中牟県(ちゅうぼうけん)というところで関所の兵士に見つかって、捕らえられてしまいました。


「私は旅の商人で、姓(せい)は皇甫(こうほ)と申します」

県令(けんれい)の前に引き出された曹操(そうそう)は、偽名を名乗って人違いだと主張します。

県令(けんれい)は曹操(そうそう)の顔をしばらくじっと見つめていましたが、やがてこう口を開きました。

「以前洛陽(らくよう)に行った時、私は曹操(そうそう)を見たことがある。見間違うはずはない、お前は曹操(そうそう)だっ!」

そう言うと県令(けんれい)は、ひとまず曹操(そうそう)を牢(ろう)に入れておき、翌日洛陽(らくよう)に護送して褒美を受け取ることにしました。



タカオタカオ

こういう時、有名人は不利だな(笑)

マリコマリコ

笑ってる場合じゃないでしょ、絶体絶命じゃないっ!

陳宮、曹操の仲間に加わる


王先生王先生

夜も更(ふ)けた頃、先程の県令(けんれい)が曹操(そうそう)がいる牢(ろう)にやってきました。


「お前は相国(しょうこく)(董卓(とうたく))に重く用いられていたはずなのに、なぜこのようなことをしたのだ?」

最初は県令(けんれい)の質問に答えようとしなかった曹操(そうそう)ですが、県令(けんれい)があまりにも熱心に尋(たず)ねるので、これまでの経緯(いきさつ)を語って聞かせました。

「もし故郷へたどり着いたならば、天子の詔書(しょうしょ)をもって諸侯を招き、兵を起こして董卓(とうたく)を討つつもりだったのだ!」

曹操(そうそう)のこの言葉を聞いた県令(けんれい)は、自(みずか)ら曹操(そうそう)の縛(いまし)めを解(と)いて言いました。

「私は姓(せい)は陳(ちん)、名は宮(きゅう)、字(あざな)は公台(こうだい)と申します。あなたの忠義のお心に感じ入りました!官職を棄(す)てて、あなたと行動を共にしたいと思います」

曹操(そうそう)は大変喜んで、その夜のうちに旅支度を調えて陳宮(ちんきゅう)と共に出発しました。



タカオタカオ

曹操(そうそう)の危機管理能力半端ないって!(笑)

マリコマリコ

本当っ!絶体絶命のピンチを切り抜けちゃった…。


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呂伯奢一家惨殺事件

呂伯奢一家惨殺事件

成皋県の呂伯奢


王先生王先生

3日ほど旅を続けて成皋県(せいこうけん)の近くまで来ると、曹操(そうそう)は陳宮(ちんきゅう)に言いました。


「この辺(あた)りに、父の義兄弟の呂伯奢(りょはくしゃ)という者がいる。今夜は彼のところに泊めてもらうことにしよう」

2人が呂伯奢(りょはくしゃ)の屋敷まで来ると、呂伯奢(りょはくしゃ)は大変心配した様子で言いました。

「朝廷からお前を捕らえよと厳しいお触れが出ているぞ。お前のお父上もすでに陳留(ちんりゅう)に避難なされた」

呂伯奢(りょはくしゃ)は「今夜は泊まっていくがよい」と言って2人を奥の座敷に通すと、もてなそうにも良い酒がないからと、酒を買いに屋敷を出ていきました。



タカオタカオ

呂伯奢(りょはくしゃ)、ええ人やぁ〜!
とりあえず、曹操(そうそう)のお父さんも無事だったんだね。

マリコマリコ

うんうん。曹操(そうそう)さんたちも、今日はゆっくり眠れるね。

王先生王先生

そのはずだったんですけどね…。

マリコマリコ

えっ!?どういうことですか?

曹操のあやまち


王先生王先生

曹操(そうそう)と陳宮(ちんきゅう)が呂伯奢(りょはくしゃ)の帰りを待っていると、屋敷の裏からなにやら刃物を研(と)ぐような音が聞こえてきます。


「もしや我々を殺そうというのではないか?」

不審(ふしん)に思った2人がそっと足音を忍ばせて音のする方へと近づいてみると、今度は呂伯奢(りょはくしゃ)の家の者が話す声が聞こえてきました。

(縛(しば)って殺したらどうだ?)

壁越しにこの会話を聞いた時、曹操(そうそう)と陳宮(ちんきゅう)の疑いは確信に変わりました。

2人は静かに剣を抜いたかと思うと、素早く斬り込んでそこにいた8人、男女の別なく全員斬り殺してしまいました。



タカオタカオ

またもや曹操(そうそう)の危機管理能力が発揮されたね。

マリコマリコ

まさか呂伯奢(りょはくしゃ)さんが裏切っていたとは…。

王先生王先生

マリコさん、お話にはまだ続きがありますよ。


2人がふと台所に目を落とすと、そこには縛り上げられて今にも殺すばかりになっている1匹の豚が置いてあるではありませんか。

つまり2人は「豚を殺す相談」を「自分たちを殺す相談」だと勘違いしていたのです。

「孟徳(もうとく)*1どの、どうやら私たちは罪のない人たちを殺してしまったようです…。」

とは言えこうしているうちにも呂伯奢(りょはくしゃ)が戻ってくるかも知れず、2人は急いで馬に乗り出発しました。



タカオタカオ

あちゃ〜っ!勘違いだったのかぁ。

マリコマリコ

どうするのこれ?
このまま逃げちゃうの!?

脚注

*1 曹操(そうそう)の字(あざな)。

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冷酷な曹操と戸惑う陳宮

曹操、呂伯奢を殺害する


王先生王先生

曹操(そうそう)と陳宮(ちんきゅう)が馬を飛ばして先を急いでいると、前方に酒や野菜をロバに乗せた呂伯奢(りょはくしゃ)がやって来るのが見えました。


呂伯奢(りょはくしゃ)は曹操(そうそう)たちに気づくと、

「どうして行ってしまわれる?家の者に豚をさばいてもてなすように命じておいた。一晩泊まっていかれよ」

と、2人を引き留(と)めようとします。

「私は罪人ですので、ゆっくりしてはいられません」

そう言って行き過ぎようとした曹操(そうそう)ですが、ふと馬を止め、馬を降りて呂伯奢(りょはくしゃ)の方へ歩み寄りました。

曹操(そうそう)は不意に呂伯奢(りょはくしゃ)の後ろを指さして「あれは何者だっ!」と叫(さけ)ぶと、そちらへ振り返った呂伯奢(りょはくしゃ)の隙(すき)をつき、一太刀(ひとたち)に斬り殺してしまいました。



マリコマリコ

えぇ〜っ!何でっ!?

タカオタカオ

当然だね。

マリコマリコ

何でよっ!?

タカオタカオ

あのまま呂伯奢(りょはくしゃ)が家に帰ったら、家族が全員殺されてるんだよ?いくら呂伯奢(りょはくしゃ)が良い人でも、曹操(そうそう)を許さないでしょ?

マリコマリコ

うん…。多分怒ると思う…。

王先生王先生

怒った呂伯奢(りょはくしゃ)が通報して、追っ手を差し向けられたらかなわない。だから曹操(そうそう)は口封じをしたんですね。

我人に背くとも人我に背かせじ


王先生王先生

マリコさんと同じように、この曹操(そうそう)の行いを許せない人がいました。陳宮(ちんきゅう)です。


「呂伯奢(りょはくしゃ)の家族のことは仕方がなかった…。だがっ!呂伯奢(りょはくしゃ)まで殺してしまうとはどういうことだっ!」

曹操(そうそう)は陳宮(ちんきゅう)に呂伯奢(りょはくしゃ)を生かしておくことの危険性を説(と)くと、

「もし私が天下の人の義に背(そむ)くとも、決して天下の人に私を背(そむ)かせたりはしないのだっ!」

と言い放ちました。これを聞いた陳宮(ちんきゅう)は返す言葉もなく黙(だま)り込んでしまいました。



マリコマリコ

随分(ずいぶん)自分勝手な言い草ね…。

タカオタカオ

この時代、この位冷酷(れいこく)じゃないと生き残れないんだよ。

王先生王先生

そうですね。
この場面は『三国志演義』の中でも、曹操(そうそう)の冷酷(れいこく)さを強烈に印象づける名場面の1つとなっています。

マリコマリコ

曹操(そうそう)さんって良い人だと思ってたのに…。

王先生王先生

タカオくんの言う通り、綺麗事(きれいごと)だけでは乱世を生き抜いていけないのです。では、お話しを続けましょう。


その夜、2人は1軒の宿屋を見つけて門を叩くと、疲れていたのか曹操(そうそう)はすぐに眠ってしまいました。

その曹操(そうそう)の寝顔を見つめながら、陳宮(ちんきゅう)は1人悩み続けます。

(私は曹操(そうそう)を英雄だと思えばこそ、官職を棄(す)ててここまでついてきた。それが、かくも残忍で無情な男だったとは…。)

陳宮(ちんきゅう)は、曹操(そうそう)をこのまま生かしておいてはきっと世の災(わざわ)いになるに違いない。ここで殺しておくのが天下のためだ。という結論に至(いた)り、曹操(そうそう)を殺すため剣に手をかけました。



王先生王先生

はたして曹操(そうそう)の命はどうなるのでしょうか…?

というところで、『三国志演義』の第4回が終わります。

マリコマリコ

えぇ〜っ!ここで終わりっ!?

タカオタカオ

なるほど。
まず曹操(そうそう)は死なないと思うけど、どうやって切り抜けるのかな?

マリコマリコ

楽しみですねっ!


中牟県(ちゅうぼうけん)で捕らえられてしまった曹操(そうそう)ですが、曹操(そうそう)の志(こころざし)に共感した県令(けんれい)・陳宮(ちんきゅう)は曹操(そうそう)を釈放し、官職を棄(す)てて行動を共にします。

その後、成皋県(せいこうけん)まで来た曹操(そうそう)たちは、父の義兄弟である呂伯奢(りょはくしゃ)に一夜の宿を求めました。ですが、呂伯奢(りょはくしゃ)の留守中に怪しい会話を聞きつけた2人は、暗殺を恐れて呂伯奢(りょはくしゃ)の一家を殺害してしまいます。

誤解に気づいた2人は急いで呂伯奢(りょはくしゃ)の屋敷から逃亡。運悪く呂伯奢(りょはくしゃ)と鉢合わせた曹操(そうそう)は、証拠隠滅(しょうこいんめつ)のために罪のない呂伯奢(りょはくしゃ)まで殺害してしまったのです。

そして、あまりにも冷酷(れいこく)な曹操(そうそう)に疑念を抱(いだ)いた陳宮(ちんきゅう)は、曹操(そうそう)の寝顔に剣を向けました。



王先生王先生

次回は、ついに曹操(そうそう)が軍勢を集めて旗揚(はたあ)げをします。

次回

【018】曹操の旗揚げと十八路諸侯(十八鎮諸侯)の集結

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 三国志演義教室【目次】