朝廷で権力を握った董卓の行いは暴虐を極め、人々は恐怖におののいていました。そんな中、司徒の王允が行動を起こします。
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董卓暗殺の密談
前回は、献帝を擁立した董卓がやりたい放題になったとこまででしたよね。
うんうん。勝手に皇帝のベッドで眠ったり、罪のない村人まで殺したりしてたっ!
そうですね!
今回はそんな董卓の行いに反発する人たちが、ついに行動を起こします。
ご確認
この記事は『三国志演義』に基づいてお話ししています。この記事でお話ししている曹操による董卓暗殺未遂事件は、『三国志演義』の創作になります。
袁紹からの手紙
ある日、司徒・王允の元に冀州の袁紹から密書が届きます。
おっ!?
袁紹さんは何て言ってきたんですか?
袁紹の手紙には、
「逆賊・董卓の行いは許されるものではありません。私は今、兵を集めて訓練を施しておりますが、まだ軽々しく動くことはできません。もし董卓に隙があれば、隙を逃さず事を起こしてください。私でお役に立てることがあればご命令に従います」
とありました。
王允は董卓を討つ方法が思いつかないので、「誕生日のお祝い」と称して旧臣を集め、相談することにしました。
へぇ〜!これって袁紹の差し金だったんだ。知らなかったっ!
曹操の秘策
王允の呼びかけによって、董卓のことを良く思っていない旧臣たちが王允の屋敷に集まります。
一通りお酒が行き渡った頃、突然王允が声を上げて泣き出しました。驚いた旧臣たちがその理由を尋ねると、
「実は、今日は私の誕生日ではない。皆が集まるための口実だ。私が涙を流したのは、董卓が権力をもてあそび、主君をないがしろにしているからだ…」
王允が答えると、これを聞いた旧臣たちも皆うつむいて涙を流し始めました。
泣くだけで、どうにかしようってヤツはいないのかよ。まったく〜っ!
でも、董卓さんに逆らったら殺されちゃうよ。やっぱりみんな恐いんだよ…。
そうですねぇ。
ですが、旧臣たちが涙を流す中、手を打って大笑いする者がいました。驍騎校尉の曹操です。
曹操さんっ!
忘れてたっ!今まで何してたのっ!?
曹操のこの登場の仕方、前にも見たな(笑)
「名だたる大臣たちが集まって、ただ泣いているだけとはっ!それで董卓を泣き殺すことができるのですかな?」
この言葉にさすがの王允も怒りをあらわにすると、曹操は続けて言いました。
「私が笑ったのは、あなた方が董卓を討つために何の策略も持っていないことです!」
曹操のこうゆう態度、キライじゃないわ。
そお!?感じ悪いでしょ(笑)
確かに曹操はいつも態度が大きいですね(笑)
王允が董卓を討つ方法を尋ねると、曹操はこう答えました。
「私は董卓の信用を得て、今では側に近づくことができるようになりました。もし王允どのがお持ちの七星宝刀をお貸し頂けるならば、董卓を刺し殺してみせましょう!」
これを聞いた王允はたいそう喜んで、すぐに七星宝刀を取り寄せて曹操に与えました。
董卓さんに反対する人の中に曹操さんがいなかったのは、董卓さんに味方するフリをしていたからなんですねっ!
そうですね。曹操は最初から、完全に軍権を握っている董卓を討つには、暗殺しかないと考えていたんでしょうね。
やるな曹操っ!態度がデカいだけのことはあるな(笑)
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董卓暗殺の決行
好機到来
次の日、曹操は懐に七星宝刀を忍ばせて、董卓がいる相国の屋敷に向かいました。
曹操が屋敷の奥までやってくると、董卓は寝台の上に座っていて、その側には呂布が付き従っています。
呂布さん〜っ!いくら曹操さんでも呂布さんには勝てないでしょ。
呂布が一緒にいるのは当然曹操も分かってたでしょ。何か策があるはずだよ。
「孟徳*1よ、なぜこんなに遅く来たのだ?」
曹操が来たことに気づいた董卓が尋ねると、曹操は「私の馬がノロノロしていたもので…」と恐縮した様子で答えました。
すると董卓は上機嫌で、西涼の名馬を選んで曹操に与えるように呂布に命じました。呂布は名馬を選ぶためにその場を退出します。
これで董卓さんと2人きりだねっ!
さすが曹操、うまいな。チャンス到来だっ!
脚注
*1 曹操の字。
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曹操の誤算
呂布が退出してしばらくすると、なんと董卓は曹操に背を向けて横になったんです。
なんだよっ!曹操はほったらかし?
董卓はひどく太っていたので、長く座っていることができなかったんですね。
でき過ぎてる…(笑)
実は、そう簡単にはいかなかったんですよ。
この機を逃すまいと曹操がゆっくりと七星宝刀を鞘から抜いたその時、たまたま董卓が鏡の方へ顔を向けると、そこには七星宝刀を構える曹操が映っていたのです。
「孟徳っ!何をするっ!」
董卓が体を起こして叫んだちょうどその時、間の悪いことに、馬を選びに行っていた呂布が座敷の外に戻ってきました。
うわぁ!曹操さん、いきなり大ピンチっ!!
すぐそこに呂布がいたんじゃ、開き直って董卓に斬りかかることもできないしね。
そうですね。
そこで曹操は機転を利かせます。
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曹操、洛陽から逃亡する
董卓に七星宝刀を献じる
曹操はとっさに跪き、七星宝刀を董卓に献上したんです。
董卓は七星宝刀を受け取って確認すると、その刃は極めて鋭く、長さは1尺(約24.2cm)余り、七宝の飾りがはめ込まれた見事な宝刀でした。
董卓は七星宝刀を呂布に渡すと、曹操を連れて馬を見に行きます。
曹操は董卓に試し乗りの許可を得て屋敷を出ると、東南に向けて一目散に駆け出しました。
さすが曹操さんっ!ピンチを切り抜けたねっ!
並の人なら一か八かで董卓に斬りかかって、返り討ちになるのがオチだね。
でも、まだピンチは終わったわけではありませんよ。
曹操、逃亡者になる
曹操が屋敷を出ると、なにやら呂布が怪訝な表情で董卓に言いました。
「先程曹操は、ご主君に害を加えようとしていたように見えました。ご主君に気づかれたため、刀を献上するなどと誤魔化したのではないでしょうか?」
そう聞くと、董卓にも怪しく思えて来ます。
呂布さんもなかなか鋭いですね。
離れて見てたから、相当怪しく見えただろうね。
2人がそんな話をしているところに、ちょうど李儒がやってきます。
李儒さんて、董卓さんの参謀の人ですね。
そうです。よく覚えていましたね!
董卓が李儒にこの一件を話すと、李儒はこう答えました。
「今すぐ人をやって曹操を呼び出しましょう。すぐにやって来れば問題はありません。もしやってこなければ、きっと暗殺のたくらみだと言えるでしょう」
董卓はこの言葉に従ってすぐに曹操を呼び出しますが、曹操は「相国から緊急の命令を受けた」と東門から走り去ったとのことです。
報告を聞いた董卓は「やはり暗殺を企んでいたのに違いないっ!」と大いに怒りました。
そして「これには必ず共謀者がいるはずです。曹操を捕らえて問い質しましょう」という李儒の進言を聞き、曹操を生け捕りにした者には褒美を与えて万戸侯に封じ、匿った者は曹操と同罪とするというお触れを出しました。
ちなみに、万戸侯に封ずるとは、一万戸ある土地を領する列侯に取り立てるということです。
すごい見返りですね!みんな必死に探しそう…。
これじゃあ王允も気が気じゃないね!
権力をもてあそぶ董卓の行いに対して、朝廷の旧臣たちはただただ涙を流して憂えることしかできませんでした。そこで董卓の暗殺に名乗り出た曹操は、王允から七星宝刀を借り受けて董卓の屋敷に向かいます。
ですが、あと少しの所で暗殺に失敗した曹操は、董卓に与えられた馬の試し乗りをするという口実で屋敷を抜け出すと、そのまま洛陽から逃亡してしまいました。
次回は、洛陽から逃亡した曹操の動向ついてお話しします。
次回
【017】「我人に背くとも人我に背かせじ」呂伯奢を殺害した曹操に戸惑う陳宮