後漢・三国時代の県令(侯国相・邑令・道令)の職務と属官・属吏についてまとめています。
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目次
県と県令(けんれい)の種類
県の種類
後漢に置かれた県には、県・侯国・邑・道の4つの種類があります。
県
一般的な県のこと。朝廷から任命された県令または県長が統治します。
侯国(列侯国)
皇族や列侯に封建された領地(県)のことを侯国(列侯国)と言います。本人ではなく朝廷から任命された侯国相が統治します。
邑
公主(天子の娘)に食邑としてあてがわれた領地(県)のことを邑(沐浴邑)と言います。本人ではなく朝廷から任命された邑令または邑長が統治します。
道
蛮夷(異民族)を住まわせた領地(県)のことを道と言います。朝廷から任命された道令または道長が統治します。
職務
県令は郡に属し、県内のすべての民を統治します。
県令には以下のような職務があります。
- 善行を明らかにして義にかなう行いを奨励する。
- 犯罪を防止し、悪事を処罰する。
- 訴訟に対し裁判を行い、賊を平定する。
- 民を憐れみ救済する。
- 毎年秋と冬に属官の成果を収集し、郡または王国に報告する。
秋・冬に1年が終わると、県(侯国・邑・道)はそれぞれ県の戸数・人口と田地の面積・銭と穀物の収支・捕らえた盗賊の人数を計上し、所属する郡国に報告します。
また、丞・尉以下県の属吏は毎年郡に赴き、それぞれ功績を評定されて賞罰を受けました。
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基本情報
種類 | 名称 | 官秩 | 品秩 | 印綬 |
---|---|---|---|---|
県 | 県令 | 千石 | 六品 | 銅印墨綬 |
県長 | 四百石 | 七品 | ||
県長 | 三百石 | 八品 | ||
侯国 (列侯国) |
侯国相 | 千石 | 六品 | |
四百石 | 七品 | |||
三百石 | 八品 | |||
邑 | 邑令 | 千石 | 六品 | |
邑長 | 四百石 | 七品 | ||
邑長 | 三百石 | 八品 | ||
道 | 道令 | 千石 | 六品 | |
道長 | 四百石 | 七品 | ||
道長 | 三百石 | 八品 |
1万戸以上の県(邑・道)の長官には令が、1万戸以下の県(邑・道)の長官には長が置かれ、1万戸以下の県(邑・道)の中でも、その規模によって官秩に違いがありました。
また、侯国相には名称の違いこそはありませんでしたが、同様にその規模によって官秩に違いがありました。
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県府・侯国府・邑府・道府の属官(後漢)
以下は『続漢書』百官志と「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成しています。【】内は【定員・官秩・品秩】で、[]内はそれぞれの王朝での情報になります。
『続漢書』百官志と『三国官職表』で情報が違う場合は、()内に『三国官職表』の情報を記載します。
洛陽令と洛陽令の属官
洛陽令(雒陽令)
【1名・千石・六品】
[後漢=○・魏=○・蜀=×・呉=×]
洛陽県(雒陽県)のすべての民を統治します。
洛陽丞(雒陽丞)
【3名・四百石・八品】
[後漢=○・魏=○・蜀=×・呉=×]
洛陽令(雒陽令)の次官。
孝廉左尉 / 孝廉右尉
【各1名・四百石(二百石)・九品】
[後漢=○・魏=○・蜀=×・呉=×]
盗賊を取り締まります。
洛陽四部尉
【各1名・四百石・?品】
[後漢=○・魏=?・蜀=×・呉=×]
盗賊を逮捕し、悪人を監視します。
後漢・魏では東南西北の4部尉が設置されていました。
『続漢書』百官志に記載はありませんが、『唐六典』巻三〇には「後漢の時代、洛陽(雒陽)に四尉を置き、すべて孝廉から任命された。東部尉・南部尉・西部尉・北部尉があった」とあり、
『通典』巻三三には「洛陽(雒陽)に四尉あり、東南西北の四部、曹公(曹操)の洛陽北部尉となるはこれなり」とあります。
おそらく『続漢書』百官志では、次のその他の属吏の中の「13名の四百石」の中に含まれていると思われます。
その他の属吏
『漢官』には、洛陽令(雒陽令)に所属する員吏は796名とあり、その内訳は以下のようになっています。
- 四百石:13名
- 郷有秩:56名
- 獄史:56名
- 佐史:77名
- 郷佐:77名
- 斗食:50名
- 令史:50名
- 嗇夫:50名
- 假(仮):50名
- 官掾史:250名
- 幹小史:250名
- 書佐:90名
- 修行:260名
一般的な県・侯国・邑・道の属官
丞
【1名・四百石 / 二百石・八品 / 九品】
[後漢=○・魏=○・蜀=○・呉=○]
県令・侯国相・邑令・道令の次官。
文書に検署し、穀倉の管理と裁判の結果を取り仕切ります。
県長・侯国相・邑長・道長の丞の官秩は二百石・九品です。
尉
【1名〜2名・四百石(二百石)・九品】
[後漢=○・魏=○・蜀=○・呉=○]
盗賊の取り締まりを取り仕切ります。
『漢官』には「大規模な県には左尉・右尉の2名の尉が置かれた」とあります。
その他の掾史
丞と尉はそれぞれ属官として曹に所属する掾と史を任命しました。県に設置された曹の組織構成は、郡に設置された曹とほぼ同じです。
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功曹史
【1名・-・-】
功績のある者を選任します。
廷掾
【1名・-・-】
功曹の任命とその他の曹に関する事柄を取り仕切ります。
郡の五官掾にあたります。
勧農掾 / 制度掾
【?名・-・-】
県・侯国・邑・道に所属する諸郷を監督します。
春・夏には勧農掾が、秋・冬には制度掾が置かれました。
郡の五部督郵にあたります。
(正門)亭長
【1名・-・-】
県府の正門を守衛します。
主記室史
【1名・-・-】
文書に記録し、物事を処理する期限を設定します。
書佐
【各1名?・-・-】
文書を管理します。
閤下(県・侯国・邑・道の属吏が執務する区画)と、各曹に設置されました。
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刺史(州刺史・部刺史)の属官一覧表(三国)
以下は「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成した「三国時代の属官一覧表」です。
詳細が不明の箇所は空白にしていますが、他の史料で情報を見つけ次第随時追記します。
官職名下の数字は定員です。
官職名 | 官秩 | 備考 | |
---|---|---|---|
品秩 | |||
洛陽令 (1) |
千石 |
|
|
六品 | |||
属官 | 洛陽丞 1 |
四百石 |
|
八品 | |||
属官 | 洛陽尉 2 |
二百石 |
|
九品 | |||
県令 (1) |
千石 |
|
|
六品 | |||
属官 | 県丞 1 |
四百石 |
|
八品 | |||
属官 | 県尉 3 |
二百石 |
|
九品 | |||
県令 (1) |
六百石 |
|
|
七品 | |||
属官 | 県丞 1 |
二百石 |
|
九品 | |||
属官 | 県尉 3 |
二百石 |
|
九品 | |||
県長 (1) |
三百石 |
|
|
八品 | |||
属官 | 県丞 1 |
二百石 |
|
九品 | |||
属官 | 県尉 3 |
二百石 |
|
九品 |