後漢(ごかん)・三国時代の太守(たいしゅ)・国相(こくしょう)(王国相(おうこくしょう))・属国都尉(ぞっこくとい)の職務と属官・属吏についてまとめています。

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太守(たいしゅ)

職務

郡の長官。郡内のすべての民を統治します。

太守(たいしゅ)には以下のような職務があります。

  • 優秀な者を昇進させる。
  • 功績がある者を推薦する。
  • 犯罪を取り調べ、裁判を行い判決を下す。
  • 毎年春に郡が管轄する県を巡察して民に農業と養蚕(ようさん)を奨励(しょうれい)し、貧しい者を救済する。
  • 毎年秋と冬には、囚人(しゅうじん)を取り調べて罰則を決定し、官吏の勤務評定を行う。
  • 1年が終わると朝廷に上計吏(じょうけいり)を派遣して報告し、孝廉(こうれん)を推挙する。
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後漢・三国時代の地方官の支配構造

基本情報

詳細が不明の箇所は空白にしています。

  後漢(ごかん) 魏(ぎ) 蜀(しょく) 呉(ご)
定員 各1人 各1人 各1人 各1人
官秩
品秩
二千石 五品    
印綬 銀印青綬      

特別な郡

司隷の領郡

司隷(しれい)の地図

三輔(さんぽ)(京兆尹(けいちょういん)・左馮翊(さひょうよく)・右扶風(ゆうふふう))

前漢(ぜんかん)の時代、首都・長安(ちょうあん)を管轄する京兆尹(けいちょういん)と、左馮翊(さひょうよく)・右扶風(ゆうふふう)の3郡の長官は、太守たいしゅではなく京兆尹けいちょういん・左馮翊さひょうよく・右扶風ゆうふふうと言い、官秩(かんちつ)は特別に中二千石とされていました。

ちなみに京兆尹(けいちょういん)・左馮翊(さひょうよく)・右扶風(ゆうふふう)の3郡のことを三輔(さんぽ)と言います。

後漢(ごかん)の時代になり首都が洛陽(らくよう)(雒陽(らくよう))に移されると、京兆尹けいちょういん・左馮翊さひょうよく・右扶風ゆうふふうの官秩(かんちつ)は二千石に下げられましたが、三輔(さんぽ)には前漢(ぜんかん)の陵園(りょうえん)と宗廟(そうびょう)があるため、それぞれの名称はそのまま引き継がれました。

河南尹(かなんいん)

後漢(ごかん)の時代になり首都が洛陽(らくよう)(雒陽(らくよう))に移されると、洛陽(らくよう)(雒陽(らくよう))を管轄する河南郡(かなんぐん)は河南尹(かなんいん)と改められ、河南尹(かなんいん)の官秩(かんちつ)も中二千石となります。

また、河南尹(かなんいん)は地方官でありながら、特別に朝廷の執(と)り行う儀礼への参加を許されました。


『漢官(かんかん)』には、河南尹(かなんいん)に所属する員吏(いんり)は927名とあり、その内訳は以下のようになっています。

  • 県有秩(けんゆうちつ):35名。
  • 官属掾史(かんぞくえんし):5名。
  • 四部督郵吏部掾(しぶとくゆうりぶえん):26名。
  • 安獄仁如(あんごくじんじょ):3名。
  • 監津渠漕水掾(かんしんきょそうすいえん):25名。
  • 百石(ひゃくせき):12名。
  • 百石卒吏(ひゃくせきそつり):250名。
  • 文学守助掾(ぶんがくしゅじょえん):60名。
  • 書佐(しょさ):50名。
  • 修行(しゅうこう):230名。
  • 幹小史(かんしょうし):231名。
司隷(しれい)諸郡の変遷
前漢(ぜんかん)
郡名 河南郡(かなんぐん) 京兆尹(けいちょういん) 左馮翊(さひょうよく) 右扶風(ゆうふふう)
官職名 河南太守(かなんたいしゅ) 京兆尹けいちょういん 左馮翊さひょうよく 右扶風ゆうふふう
官秩 二千石 中二千石 中二千石 中二千石
後漢(ごかん)
郡名 河南尹(かなんいん) 京兆尹(けいちょういん) 左馮翊(さひょうよく) 右扶風(ゆうふふう)
官職名 河南尹(かなんいん) 京兆尹けいちょういん 左馮翊さひょうよく 右扶風ゆうふふう
官秩 中二千石 二千石 二千石 二千石

皇族・諸侯に与えられた郡

皇族または諸侯に封建された郡を王国(おうこく)と言います。

王国(おうこく)には、太守(たいしゅ)ではなく官秩(かんちつ):二千石の国相(こくしょう)(王国相(おうこくしょう))が置かれました。

辺境異民族を居住させた郡

辺境の異民族を居住させた郡を属国(ぞっこく)と言います。

属国(ぞっこく)には、太守(たいしゅ)ではなく官秩(かんちつ):比二千石の属国都尉(ぞっこくとい)が置かれました。

郡の長官一覧

名称 官秩(かんちつ) 次官 備考
太守(たいしゅ)
二千石 丞(じょう) 一般的な郡の長官
長史(ちょうし) 辺境の防衛に当たる郡の長官
国相(こくしょう) 二千石 丞(じょう) 皇族・諸侯王に封建された郡の長官
属国都尉(ぞっこくとい) 比二千石 丞(じょう) 異民族を居住させた郡の長官

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太守・国相・属国都尉の属官

以下は『続漢書(ぞくかんじょ)』百官志(ひゃっかんし)と「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成しています。【】内は【定員・官秩(かんちつ)・品秩】で、[]内はそれぞれの王朝での情報になります。

『続漢書(ぞくかんじょ)』百官志(ひゃっかんし)と『三国官職表(さんごくかんしょくひょう)』で情報が違う場合は、()内に『三国官職表(さんごくかんしょくひょう)』の情報を記載します。

郡丞(ぐんじょう)

【各1名・六百石・八品】

[後漢(ごかん)=○・魏(ぎ)=○・蜀(しょく)=○・呉(ご)=○]


太守(たいしゅ)・国相(こくしょう)(王国相(おうこくしょう))・属国都尉(ぞっこくとい)の次官。

長史(ちょうし)

【各1名・六百石?・-】

[後漢(ごかん)=○・魏(ぎ)=?・蜀(しょく)=?・呉(ご)=?]


辺境の防衛にあたる郡に、丞(じょう)の代わりに置かれた太守(たいしゅ)の次官。

尉(い)(都尉(とい))

【各1名・六百石?・-】

[後漢(ごかん)=○・魏(ぎ)=?・蜀(しょく)=?・呉(ご)=?]


郡内の守衛を取り仕切り、盗賊の発生に備えます。

建武(けんぶ)6年(30年)8月に廃止され、その職務は太守(たいしゅ)が担当するようになりましたが、大規模な賊(ぞく)が発生した際には臨時に都尉(とい)が設置され、賊(ぞく)を鎮圧すると解散されました。


右扶風都尉(ゆうふふうとい)

【各1名・六百石?・-】

[後漢(ごかん)=○・魏(ぎ)=?・蜀(しょく)=?・呉(ご)=?]


三輔(さんぽ)の陵園(りょうえん)を守備します。


京兆虎牙都尉(けいちょうこがとい)

【各1名・六百・-】

[後漢(ごかん)=○・魏(ぎ)=?・蜀(しょく)=?・呉(ご)=?]


三輔(さんぽ)の陵園(りょうえん)を守備します。


その他の掾属(えんぞく)

太守(たいしゅ)・国相(こくしょう)(王国相(おうこくしょう))・属国都尉(ぞっこくとい)の曹(そう)の組織構成は、三公府(さんこうふ)に所属する曹(そう)とほぼ同じですが、東曹(とうそう)と西曹(せいそう)、令史(れいし)は設置していませんでした。

独自の掾属(えんぞく)
功曹史(こうそうし)

【1名・-・-】

功績のある者を選任します。

五官掾(ごかんえん)

【1名・-・-】

功曹(こうそう)の任命および諸曹(しょそう)を取り仕切ります。

五部督郵(ごぶとくゆう)

【各1名・-・-】

郡に所属する諸県を監督します。

東部・南部・西部・北部・中部の5部に分かれ、それぞれ管轄する諸県の監督をします。

(正門(せいもん))亭長(ていちょう)

【1名・-・-】

郡府の正門を守衛します。

主記室史(しゅきしつし)

【1名・-・-】

文書に記録し、物事を処理する期限を設定します。

書佐(しょさ)

【各1名?・-・-】

文書を管理します。

閤下(こうか)(太守(たいしゅ)・国相(こくしょう)・属国都尉(ぞっこくとい)の属吏が執務する区画)と、各曹(そう)に設置されました。



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太守・国相・属国都尉の属官一覧表(三国)

以下は「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成した「三国時代の属官一覧表」です。

詳細が不明の箇所は空白にしていますが、他の史料で情報を見つけ次第随時追記します。

官職名下の数字は定員です。

魏

官職名 官秩 備考
品秩
河南尹(かなんいん)
(1)
中二千石
  • 首都を治(おさ)める。
三品
属官 廩犠丞(ひんぎじょう)
1
四百石
  • 穀物の貯蔵、祭祀(さいし)に供する犠牲(いけにえ)の養育を司(つかさど)る。
八品
属官 洛陽市長(らくようしちょう)
3
二百石
  • 市場を管理する。
九品
属官 洛陽市長の丞(らくようしちょう)
3
二百石
  • 洛陽市長(らくようしちょう)の次官。
九品
属官 功曹(こうそう)
1
–
  • 以下諸郡太守(しょぐんたいしゅ)・諸郡都尉(しょぐんとい)も同じ
–
属官 五官(ごかん)
1
–  
–
属官 計曹(けいそう)
1
–  
–
属官 上計(じょうけい)
1
–  
–
属官 門下(もんか)
1
–  
–
属官 文学(ぶんがく)
1
–  
–
属官 文学祭酒(ぶんがくさいしゅ)
1
–  
–
属官 督郵(とくゆう)
1
–  
–
属官 主簿(しゅぼ)
1
–  
–
属官 主記(しゅき)
1
–  
–
属官 門下書佐(もんかしょさ)
1
–  
–
属官 門下小吏(もんかしょうり)
1
–  
–
属官 綱紀(こうき)
1
–  
–
属官 循行(じゅんこう)
1
–
  • その他の属官は不明。
–
諸郡太守(しょぐんたいしゅ)
(各1)
六百石
  • 太守(たいしゅ)はすべて将軍(しょうぐん)号を加える。
  • 郡民の統治を行う。
  • 官吏(かんり)の推挙を行う。
  • 犯罪の取り締まりを行う。
三品
属官 丞(じょう) –
  • 太守(たいしゅの次官。
–
属官 中正(ちゅうせい)
1
–
  • 九人官人法に則(のっと)り、人材の選抜推挙に当たる。
八品
諸郡都尉(しょぐんとい)
(各1〜2)
比二千石
  • 郡の治安に当たる。
  • 大郡には2名置かれた。
  • 東西部もしくは南北部に分けることがある。
五品
属官 典兵司馬(てんぺいしば)
1
–  
八品
属官 禁備司馬(きんびしば)
1
–  
八品
属官 盗賊司馬(とうぞくしば)
1
–  
八品
淮海津都尉(わいかいしんとい)
(?)
–
  • 徐州(じょしゅう)に置かれた都尉(とい)。
八品
宜禾伊吾都尉(ぎかいごとい)
(?)
–
  • 敦煌(とんこう)に置かれた都尉(とい)。
八品

蜀

官職名 官秩 備考
品秩
太守(たいしゅ)
(各1)
六百石
  • 太守(たいしゅ)はすべて将軍(しょうぐん)号を加える。
  • 郡民の統治を行う。
  • 官吏(かんり)の推挙を行う。
  • 犯罪の取り締まりを行う。
三品
属官 丞(じょう) –
  • 太守(たいしゅの次官。
–
属官 功曹掾(こうそうえん)
1
–
  • 以下諸郡都尉(しょぐんとい)も同じ。
–
属官 功曹史(こうそうし)
1
–

 

–
属官 五官掾(ごかんえん)
1
–  
–
属官 師友祭酒(しゆうさいしゅ)
1
–  
–
属官 門下書佐(もんかしょさ)
1
–  
–
属官 主簿(しゅぼ)
1
–
  • その他の属官は不明。
–
諸郡都尉(しょぐんとい)
(各1〜2)
比二千石
  • 郡の治安に当たる。
  • 大郡には2名置かれた。
  • 東西部もしくは南北部に分けることがある。
五品

呉

官職名 官秩 備考
品秩
太守(たいしゅ)
(各1)
六百石
  • 太守(たいしゅ)はすべて将軍(しょうぐん)号を加える。
  • 郡民の統治を行う。
  • 官吏(かんり)の推挙を行う。
  • 犯罪の取り締まりを行う。
三品
属官 丞(じょう) –
  • 太守(たいしゅの次官。
–
属官 功曹掾(こうそうえん)
1
–
  • 以下諸郡都尉(しょぐんとい)の属官も同じ。
–
属官 門下諸佐(もんかしょさ)
1
–

 

–
属官 門下循行(もんかじゅんこう)
1
–
  • その他の属官は不明。
–
諸郡都尉(しょぐんとい)
(各1〜2)
比二千石
  • 郡の治安に当たる。
  • 大郡には2名置かれた。
  • 東西部もしくは南北部に分けることがある。
五品
他の官職についてはこちら

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