後漢ごかん・三国時代の少府しょうふに文属する官職のうち、符節台ふせつだい御史台ぎょしだいに属する官職の職務と属官・属吏についてまとめています。

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少府の属官一覧

少府しょうふの属官には、少府しょうふに所属する官職と、形式的には少府しょうふに属しますが、実際は天子てんしに直属(文属)する官職があります。

少府しょうふの属官は非常に多いため、この記事では「少府しょうふの属官4(文属)」について記載します。

=後漢ごかんのみ =しょく)のみ =しょく)は光禄勲府こうろくくんふに所属

少府の属官1(所属)

少府しょうふ

少府の属官2(文属)

以下の官職は、形式的には少府しょうふに属しますが、実際は天子てんしに直属する官職になります。

少府の属官3(文属)

尚書台しょうしょだい

少府の属官4(文属)

符節台ふせつだい

御史台ぎょしだい


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少府の属官4(文属・後漢)

以下は続漢書ぞくかんじょ百官志ひゃっかんしと「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成しています。【】内は【定員・官秩・品秩】で、[]内はそれぞれの王朝での情報になります。

続漢書ぞくかんじょ百官志ひゃっかんし三国官職表さんごくかんしょくひょうで情報が違う場合は、()内に三国官職表さんごくかんしょくひょうの情報を記載します。

符節台(ふせつだい)

符節令ふせつれい

【1名・六百石・五品】

後漢ごかん=○・=○・しょく=○・=○]


符節台ふせつだいの長。

符節ふせつに関する事柄を取り仕切り、天子てんしが派遣する使者にせつさずけます。


符節ふせつとは符信ふしん)とせつのことで、天子てんしまたは臨朝りんちょうしている皇太后こうたいごうの命令をびて使者に立つ者や出征する将軍しょうぐんなどにさずけられ、権力を委譲いじょうされたあかしとなります。


せつとは旗印はたじるしの一種で、棒に旄牛ぼうぎゅう(ヤク)の尾でつくった「ふさ」をつけたものです。せつさずけられた者には以下のような専断権が与えられました。

  • 使持節しじせつ
    軍事以外の事でも二千石以下の官吏までを処刑できる権限。
  • 持節じせつ
    無官の者を処刑できる権限。
  • 仮節かせつ
    軍令違反者を処刑できる権限。
属官
尚符璽郎中しょうふじろうちゅう

【4名・-・-】

後漢ごかん=○・=符璽郎ふじろうしょく=?・=○]


4名の尚符璽郎中しょうふじろうちゅうのうち、2名は禁中きんちゅうに滞在し、2名は天子てんし六璽ろくじ)ならびに虎符こふ銅虎符どうこふ)・竹符ちくふ竹使符ちくしふ)の半分を保管します。

  • 虎符こふ銅虎符どうこふ
    虎の形をした銅製の割り符で、太守たいしゅが兵士を徴発する際や、京師けいし洛陽らくよう)から派遣された督軍使者とくぐんししゃ太守たいしゅに徴兵を要求する際に必要とされました。
  • 竹符ちくふ竹使符ちくしふ
    竹のふしをかたどった銅製の割り符で、太守たいしゅが兵士以外の物資や人夫にんぷを徴発する際や、京師けいし洛陽らくよう)との間で公文書を受け渡す際に必要とされました。

虎符こふ銅虎符どうこふ)・竹符ちくふ竹使符ちくしふ)はともに長さ6寸(約10cm)程度の大きさで、右半分を中央が保管し、左半分を地方長官が保管します。

符節令史ふせつれいし

【1名・二百石・-】

後漢ごかん=○・=×・しょく=×・=×]


文書の作成を取り仕切ります。


御史台(ぎょしだい)

御史中丞ぎょしちゅうじょう

【1名・千石・四品】

後漢ごかん=○・=○・しょく=○・=○]


御史台ぎょしだいの長。蘭台らんだいを管轄します。

禁中きんちゅうもうけられた官衙かんが(役所)において法度はっと(禁制)を執行し、宮殿内に滞在する者を監督して不法行為をひそかに摘発します。


御史中丞ぎょしちゅうじょうは朝会において独座して州刺史しゅうししを監督し、百官の犯した罪を取り調べました。

二千石(太守たいしゅ国相こくしょう)、または侍御史じぎょしの中から優秀な者が選ばれて任命され、地方に転出して二千石(太守たいしゅ国相こくしょう)に任命されます。


御史中丞ぎょしちゅうじょうはもとは御史大夫ぎょしたいふじょうで、三公さんこう制の改編によって御史大夫ぎょしたいふ司空しくうとなると、御史大夫ぎょしたいふの所属から離れて御史台ぎょしだいの長となり、少府しょうふに文属するようになりました。

また、建安けんあん年間(196年〜220年)に御史大夫ぎょしたいふが設置されましたが、御史中丞ぎょしちゅうじょうを管轄せず、1名の長史ちょうしを設置しました。


治書侍御史ちしょじぎょし

【2名・六百石・六品】

後漢ごかん=○・=○・しょく=?・=?]


法律に明るい者を選んで管理に任用することを取り仕切り、郡国から奏讞そうげつ(上告)された様々な案件について、法律にもとづいて是非を論決します。


治書侍御史ちしょじぎょしは、侍御史じぎょしの中から優秀な者が選ばれて任命されました。


侍御史じぎょし監察御史かんさつぎょし

【15名(8名)・六百石・七品】

後漢ごかん=○・=○・しょく=?・=○(定員不明)]


不法行為を察知して摘発てきはつします。

  • 公卿こうけいや官吏の上奏文を受け取り、その内容に過失があった場合には上奏者を摘発てきはつして弾劾だんがいします。
  • 郊廟こうびょう祭祀さいしや大朝会、大封拜だいほうはい大封拝だいほうはい)においては、15名のうち2名が臣下の威儀いぎの正しさを監督し、過失があれば弾劾だんがいします。
  • 15名のうち2名は交代で宿直します。
  • 禁中きんちゅうもうけられた官衙かんが(役所)において法を執行する者は、百官の犯した罪を取り調べます。

侍御史じぎょしには三公府さんこうふに所属する掾属えんぞくの中から優秀な者が任命され、試用期間の間はしゅと呼ばれ、1年間が経過すると正式任用にあたるしんを拝命します。

また、侍御史じぎょしの任官者のうち治劇ちげきと評価された者は地方に転出して刺史ししまたは二千石(太守たいしゅ国相こくしょう)に任命され、平遷へいせんして県令けんれいに任命されました。


蘭台令史らんだいれいし

【不明・六百石・九品】

後漢ごかん=○・=○・しょく=?・=?]


蘭台らんだいに所属する令史れいし

上奏文の管理や文書を封印して作成することを取り仕切ります。



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符節台・御史台の属官一覧表(三国)

以下は「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成した「三国時代の属官一覧表」です。

詳細が不明の箇所は空白にしていますが、他の史料で情報を見つけ次第随時追記します。

官職名下の数字は定員です。

符節台(ふせつだい)

官職名 秩石 備考
品秩
符節令ふせつれい
(1)
六百石
  • せつ銅虎符どうこふ竹使符ちくしふつかさどる。
  • しょく=同名。
五品
属官 符璽郎ふじろう
4
  • 宮中でつかさどり、銅虎符どうこふ竹使符ちくしふの片側を保存する。
  • しょく=不明。=同名。
七品

御史台(ぎょしだい)

官職名 秩石 備考
品秩
御史中丞ぎょしちゅうじょう
(1)
千石
  • 官吏の監察・弾劾だんがいつかさどる。
  • しょく=同名。
四品
属官 持書執法じしょしゅうほう
1
  • 上奏・弾劾だんがいつかさどる。
  • しょく=無。=中左右執法ちゅうさゆうしっぽう(各1名)。諸官の事務を行う。
六品
属官 督軍糧執法とくぐんりょうしゅうほう
1
  • 出征した際に置く。
  • しょく=無。
六品
属官 持書侍御史じしょじぎょし
2
六百石
  • 律令をつかさどる。
  • しょく=不明。
六品
属官 侍御史じぎょし
8
六百石
  • 不法の監察・弾劾だんがい、上奏文の遺失の弾劾だんがいにあたる。8曹に分かれる。
  • しょく=不明。
  • =同名。定員不明。
七品
属官 殿中侍御史でんちゅうじぎょし
2
六百石
  • 殿中でんちゅうで不法を監察する。
  • しょく=無。
七品
属官 三台さんだい五都侍御史ごとじぎょし
2
  • 尚書しょうしょ符節ふせつなどの台、及び長安ちょうあんしょう許都きょとぎょう洛陽らくようの五都に分駐する。
  • しょく=無。
七品
属官 督軍糧御史とくぐんりょうぎょし
1
  • 出征した際に置く。
  • しょく=無。=監農御史かんのうぎょし
七品
属官 禁防御史きんぼうぎょし
不明
  • しょく=無。
七品
属官 蘭台令史らんだいれいし
不明
  • 上奏及び印工・文書をつかさどる。
九品
他の官職についてはこちら

【後漢・三国時代の官職】目次