後漢・三国時代の少府に文属する官職のうち、尚書台と符節台、御史台を除いた官職の職務と属官・属吏についてまとめています。
スポンサーリンク
少府の属官一覧
少府の属官には、少府に所属する官職と、形式的には少府に属しますが、実際は天子に直属(文属)する官職があります。
少府の属官は非常に多いため、この記事では「少府の属官2(文属)」について記載します。
○=後漢のみ ★=魏(蜀・呉)のみ ☆=魏(蜀・呉)は光禄勲府に所属
少府の属官1(所属)
少府の属官2(文属)
以下の官職は、形式的には少府に属しますが、実際は天子に直属する官職になります。
- 侍中
- 散騎常侍 ★
- 員外散騎常侍 ★
- 中常侍
- 給事中 ★
- 黄門侍郎(侍中侍郎・給事黄門侍郎)
- 散騎侍郎 ★
- 小黄門
- 黄門令 ☆
- 黄門署長
- 黄門署丞 ★
- 畫室署長(画室署長) ○
- 玉堂署長 ○
- 丙署長 ○
- 中黄門宂従僕射
- 中黄門
- 黄門従官 ★
- 黄門都監 ★
- 黄門監 ★
- 掖庭令 ☆
- 永巷令 ○
- 永巷丞 ○
- 御府令
- 祠祀令 ○
- 祠祀丞 ○
- 鉤盾令
- 中蔵府令
- 内者令 ○
- 尚方令
- 平準令 ★
- 平準丞 ★
少府の属官3(文属)
尚書台
少府の属官4(文属)
符節台
御史台
スポンサーリンク
少府の属官2(文属・後漢)
以下は『続漢書』百官志と「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成しています。【】内は【定員・官秩・品秩】で、[]内はそれぞれの王朝での情報になります。
『続漢書』百官志と『三国官職表』で情報が違う場合は、()内に『三国官職表』の情報を記載します。
以下、赤字の官職名は宦官の専任です。
侍中
【なし・比二千石・三品】
[後漢=○・魏=○・蜀=○・呉=○]
天子のそば近くに仕え、様々な事柄で天子を助け導き、顧問応対をします。
天子が出御(外出)する際には、1名が法駕(天子の車駕)に同乗し、その他は馬に乗り後ろに従いました。
侍中は天子の意思を公卿(三公・九卿)に諭し聞かせ、宮殿に昇り天子の言葉を伝えて命令を発布します。
天子の車駕に同乗する際には璽を帯びて剣を持ちます。
侍中には、老年で名望のある儒者で徳が高く、学識が豊かで思慮深い者が選ばれます。
もとは宦官とともに禁中に滞在しましたが、章帝の元和年間(84〜87年)に侍中の郭挙が後宮の女性と通じ、剣を抜いて章帝を恐れさせる事件が起こったため、侍中は禁中の外に出されました。
中常侍
【なし・千石(比二千石)・三品】
[後漢=○・魏=○・蜀=○・呉=?]
天子のそば近くに仕えて内宮(長楽宮・永楽宮)に入り、内宮において天子を助け導き、顧問応対をします。
黄門侍郎
【なし(4名)・六百石・五品】
[後漢=○・魏=○・蜀=○・呉=黄門郎]
天子のそば近くに仕え、禁中において職務に従事し、禁中の外との文書の受け渡しを担当します。また、王(諸侯王)が宮殿内で朝見するにあたり、王(諸侯王)を誘導して着座させます。
献帝が即位すると、侍中と給事黄門侍郎を設置し、定員をそれぞれ6名とします。
給事黄門侍郎は、禁中に出入りして尚書台を通さずに上奏文を天子に伝達しました。
小黄門
【なし・六百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=中使]
天子のそば近くに仕えて、上奏文に対する天子の決裁を尚書曹に通達します。
天子が内宮(長楽宮・永楽宮)に滞在する際には、禁中の外との文書の受け渡しを担当し、中宮(皇后)や后妃に関する様々な事柄を取り仕切ります。
また、公主(天子の娘)や王太妃(先代王の妻)が病に臥せった際は、天子の使者としてお見舞いします。
黄門令
【1名・六百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=○・呉=?]
禁中に出入りする宦官(黄門郎)を統率します。
黄門郎は、夕暮れに青滞門に拝するので夕郎とも呼ばれ、魏(蜀・呉)では光禄勲府に属しました。
『漢官』には、黄門令に所属する員吏は18名とあります。
属官
黄門丞
【1名・三百石(二百石)・九品】
[後漢=○・魏=○・蜀=○・呉=?]
官吏の従者の禁中への出入りを管理します。
黄門従丞
【1名・三百石(二百石)・九品】
[後漢=○・魏=○・蜀=○・呉=?]
官吏の従者の禁中への出入りを管理します。
黄門署長
【1名・四百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
畫室署長(画室署長)
【1名・四百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
玉堂署長
【1名・四百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
丙署長
【7名・四百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
以上の4つの官職は、中宮(皇后の居所である長秋宮)に設けられた別の場所を取り仕切ります。
中黄門宂従僕射
【1名・六百石・六品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
中黄門宂従を統率します。
中黄門宂従は、天子が禁中に滞在する際には宿直して宮殿の門を守衛し、天子が出御(外出)する際には騎乗して天子の乗輿車をはさみ、護衛として随従します。
中黄門
【なし・比百石 → 比三百石・六品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
禁中における様々な職務に従事します。
掖庭令
【1名・六百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
後宮に住まう貴人と采女に関する事柄を取り仕切ります。
魏(蜀・呉)では光禄勲府に属しました。
『漢官』には、掖庭令に所属する吏従官は167名、待詔は5名、員吏は10名とあります。
属官
掖庭左丞 / 掖庭右丞
【各1名・三百石(二百石)・九品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
掖庭令の次官。
暴室丞
【1名・六百石・七品】
[後漢=○・魏=暴室令・蜀=?・呉=?]
暴室に関する事柄を取り仕切ります。
禁中に住まう女性が病気になると、暴室で治療を受けました。また、皇后や貴人が罪を犯した場合には、暴室に幽閉されました。
永巷令
【1名・六百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
官奴婢(官有の下男下女)と侍使(貴人のそばに仕える書記。右筆)を取り仕切ります。
『漢官』には、永巷令に所属する員吏は6名、吏従官は34名とあります。
属官
永巷丞
【1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
永巷令の次官。
御府令
【1名・六百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=○]
官婢(官有の下女)のうち、禁中で使用する衣服の仕立て・繕い、洗濯をする者を取り仕切ります。
『漢官』には、御府令に所属する員吏は7名、吏従官は30名とあります。
属官
御府丞
【1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=○]
御府令の次官。
織室丞
【1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
不明。
祠祀令
【1名・六百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
禁中における様々な小規模な祭祀を取り仕切ります。
『漢官』には、祠祀令に所属する吏従官は8名、騶僕射は1名、家巫は8名とあります。
属官
祠祀丞
【1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=○]
祠祀令の次官。
鉤盾令
【1名・六百石・-】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=?]
洛陽(雒陽) 近郊の様々な池・苑囿・物見台を取り仕切ります。
『漢官』には、鉤盾令に所属する吏従官は40名、員吏は48名とあります。
属官
鉤盾丞
【1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=○]
鉤盾令の次官。
永安丞
【1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=○・蜀=×・呉=×]
永安宮(北宮の東北に設けられた小規模な宮殿)の苑囿を取り仕切ります。
苑中丞
【1名・二百石・-】
[後漢=○・魏=○・蜀=×・呉=×]
苑囿内に設けられた離宮を取り仕切ります。
果丞
【1名・二百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
果樹園を取り仕切ります。
鴻池丞
【1名・二百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
洛陽(雒陽)の東20里にある鴻池(池の名前)を取り仕切ります。
南園丞
【1名・二百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
洛水の南に設けられた南園を取り仕切ります。
濯龍監
【1名・四百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
北宮に近い濯龍(苑囿の名前)を取り仕切ります。
(応劭の『漢官秩』には、濯龍監の官秩は六百石とあります)
直里監
【1名・四百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
洛陽城(雒陽城)西南の角に設けられた直里(苑囿の名前)を取り仕切ります。
胡熟監
【1名・?・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
胡熟(苑囿の名前?)を取り仕切ります。
(顕陽苑丞)
【1名・?・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
顕陽苑を取り仕切ります。桓帝が設置しました。
苑中丞、果丞、鴻池丞、南園丞には、それぞれ属官として1名の署が設置されていました。
中蔵府令
【1名・六百石・七品】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=○]
禁中に所蔵する貨幣・絹・金・銀・その他の様々な物資を取り仕切ります。
『漢官』には、中蔵府令に属する員吏は13名、吏従官は6名とあります。
属官
中蔵府丞
【1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=○]
中蔵府令の次官。
内者令
【1名・六百石・-】
[後漢=○・魏=×・蜀=×・呉=×]
宮城内に所蔵する布・帳・その他の様々な日用品を取り仕切ります。
『漢官』には、内者令に属する従官録士は1名、員吏は19名とあります。
属官
内者左丞 / 内者右丞
【各1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=○・蜀=?・呉=○]
内者令の次官。
尚方令
【1名・六百石・七品】
[後漢=○・魏=中左右尚方令(各1)・蜀=?・呉=○]
職人が作製した刀剣その他、様々な立派な器物の献上を取り仕切ります。
『漢官』には、尚方令に属する員吏は12名、吏従官は6名とあります。
属官
尚方丞
【各1名・三百石・-】
[後漢=○・魏=中左右尚方丞(各1)・蜀=?・呉=○]
尚方令の次官。
スポンサーリンク
侍中府の属官一覧表(三国)
後漢において侍中府は設置されておらず、上記の官職はそれぞれ独立して天子に直属していました。
以下は「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成した「三国時代の侍中府の属官一覧表」です。
詳細が不明の箇所は空白にしていますが、他の史料で情報を見つけ次第随時追記します。
官職名下の数字は定員です。
官職名 | 秩石 | 備考 | |
---|---|---|---|
品秩 | |||
侍中 (4) |
比二千石 |
|
|
三品 | |||
散騎常侍 (4) |
比二千石 |
|
|
三品 | |||
員外散騎常侍 (不定) |
– |
|
|
– | |||
中常侍 (不定) |
比二千石 |
|
|
三品 | |||
給事中 (不定) |
– |
|
|
五品 | |||
給事黄門侍郎 (4) |
六百石 |
|
|
五品 | |||
散騎侍郎 (4) |
六百石 |
|
|
五品 | |||
黄門宂従僕射 (1) |
六百石 |
|
|
六品 | |||
小黄門 (不定) |
六百石 |
|
|
七品 | |||
黄門諸署長 (各1) |
六百石 |
|
|
七品 | |||
黄門署丞 (1) |
– |
|
|
七品 | |||
中黄門 (1) |
比三百石 |
|
|
七品 | |||
黄門従官 (不明) |
– |
|
|
八品 | |||
黄門都監 (不明) |
– |
|
|
– | |||
黄門監 (不明) |
– |
|
|
– |