後漢・三国時代に置かれた亭長・里魁の職務、属官・属吏と、その他の地方官についてまとめています。
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目次
亭長(ていちょう)
亭とは
県には県城の内外に10里(約4km)に1つの間隔で「旅人が宿泊するための宿舎」である亭が置かれ、亭には亭長が置かれていました。
職務
亭長には、次のような職務があります。
- 亭を管理する。
- 盗賊の発生を防止する。
- 盗賊を捕縛し、その処断について都尉に伺いを立てる。
亭長はもともと負弩と呼ばれていましたが、亭長または亭候、亭父と呼ばれるようになりました。
その地域の中心的な亭は都亭と呼ばれ、有事の際には軍勢を駐屯させることもあります。
(黄巾の乱が起こった時、大将軍・何進は洛陽(雒陽)城内の都亭に駐屯しました)
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亭長(ていちょう)の属吏
以下は『続漢書』百官志と「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」を基に作成しています。【】内は【定員・官秩・品秩】で、[]内はそれぞれの王朝での情報になります。
『続漢書』百官志と『三国官職表』で情報が違う場合は、()内に『三国官職表』の情報を記載します。
郵佐
【?名・-・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
県には亭とは別に5里(約2km)に1つの間隔で郵が置かれていました。
郵佐は郵に置かれ、悪事を働く者を取り締まります。
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里魁(りかい)/ 里正(りせい)
里とは
後漢では民を「什(10戸の家)」・「伍(5戸の家)」ごとにまとめ、家同士でお互いに監察させました。この什・伍をまとめた集落のことを里と言います。
また、『周礼』には「5つの家を鄰とし、4つの鄰を里とする」とあります。
職務
1つの里(およそ100戸)を管轄し、民の善い事柄と悪い事柄を監官に報告します。
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その他の地方官
異民族の侵攻にさらされている辺境の県や、塩・鉄などを産出する県などには、一般の県には存在しない特別な官職が置かれました。
障塞尉
【?名・-・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
辺境の県に置かれ、障・塞(軍事基地)を侵犯する羌夷(羌人)に備えます。
鹽官令(塩官令)
【1名・千石 / 四百石 / 三百石・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
塩を多く産出する郡や県には鹽官令(塩官令)が置かれ、塩税の徴収を取り仕切ります。
その規模に応じて千石の鹽官令(塩官令)、四百石または三百石の鹽官長(塩官長)が置かれました。
属官
鹽官丞(塩官丞)
【1名・四百石 / 二百石・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
鹽官令(塩官令)または鹽官長(塩官長)の次官。
その他職務に応じて員吏を設置して俸禄を支給しましたが、県の定員には数えませんでした。
鐵官令(鉄官令)
【1名・千石 / 四百石 / 三百石・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
鉄を多く産出する郡や県には鐵官令(鉄官令)が置かれ、鞴で火をおこして鉄を鋳ることを取り仕切ります。
その規模に応じて千石の鐵官令(鉄官令)、四百石または三百石の鐵官長(鉄官長)が置かれました。
属官
鐵官丞(鉄官丞)
【1名・四百石 / 二百石・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
鐵官令(鉄官令)または鐵官長(鉄官長)の次官。
その他職務に応じて員吏を設置して俸禄を支給しましたが、県の定員には数えませんでした。
工官令
【1名・千石 / 四百石 / 三百石・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
工房が多く建設されている郡や県には工官令が置かれ、工房の税の徴収と生産物を取り仕切ります。
その規模に応じて千石の工官令、四百石または三百石の工官長が置かれました。
属官
工官丞
【1名・四百石 / 二百石・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
工官令または工官長の次官。
その他職務に応じて員吏を設置して俸禄を支給しましたが、県の定員には数えませんでした。
水官令
【1名・千石 / 四百石 / 三百石・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
川と池が多く漁業が盛んな郡や県には水官令が置かれ、水の供給を公平にすることと、漁税の徴収を取り仕切ります。
その規模に応じて千石の水官令、四百石または三百石の水官長が置かれました。
属官
水官丞
【1名・四百石 / 二百石・-】
[後漢=○・魏=?・蜀=?・呉=?]
水官令または水官長の次官。
その他職務に応じて員吏を設置して俸禄を支給しましたが、県の定員には数えませんでした。
郷に置かれた官吏の属官一覧表(三国)
亭長以下、この記事で紹介している官職について「ちくま学芸文庫『正史 三国志8』三国官職表」には記載がありませんが、魏・蜀漢・呉ともに同様の官職が置かれていたものと思われます。