正史『三国志』をもとにした歴史小説である『三国志演義』。
「三国志」に興味を持って読み始めたけどなんだか難しい…。そんなあなたに、王先生が『三国志演義』をやさしく解説します。
「三国志演義教室」では、三国志に興味を持ち始めたタカオ君とマリコちゃんに、王先生がやさしく解説していきます。
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『三国志』っていつの時代の話?
『三国志』の物語を簡単に説明すると、中国の後漢の末期、「黄巾の乱」と呼ばれる農民反乱をきっかけとして、各地の有力者たちが勢力を拡大し、やがて3つの国に分かれて中国の覇権を争うというお話です。
このくらいのことは、2人とももう知っているかな?
じゃあ、これが西暦何年くらいの話だか分かるかい?
はい、このくらいはなんとか。
う〜ん、日本の戦国時代くらいじゃないのかな?
まって、中国の王朝は…
殷・周・春秋戦国・秦・前漢・新・後漢と続くはずだから、もっとずっと前の話よ。 日本が戦国時代の時は、中国は明の時代のはずだもの。
マリコさん詳しいですね!
そうです。その後漢です。
なるほど。春秋戦国時代って『キングダム』の時代だよね。その後くらいの話なのか。
春秋戦国時代の後には、『史記』に見られる秦の末期から前漢建国までの、項羽と劉邦のお話も有名ですよ。
一般に三国時代の始まりと言われている「黄巾の乱」が起こったのは、西暦で言うと184年のことです。
うひゃあ、そんな昔かぁ!
そんな時代から、あんな日本の戦国時代と同じような戦い方をしてたのか…。
その頃の日本って、どんな感じだったんですか?
その頃の日本は、ちょうど卑弥呼の時代です。
ちなみに卑弥呼についての記録があるのは、175年〜248年頃と言われています。
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日本で出土したことで有名な「漢委奴國王」と刻まれた金印のことは、中国の歴史書の一つである『後漢書東夷伝』に、卑弥呼や邪馬台国については『魏志倭人伝』に記録されています。
『魏志倭人伝』の魏とは、三国時代に魏・蜀・呉に分かれたうちの魏の国のことで、『魏志倭人伝』は、正史『三国志』の中の『魏書』烏丸鮮卑東夷伝にある倭の項目のことを指します。
江戸時代に博多湾の志賀島で偶然発見された「金印」
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『三国志』と『三国志演義』
ひと口に「三国志」と言っても、正史、つまり歴史書の『三国志』と、正史をもとにした歴史小説である『三国志演義』があるのは知ってるかな?
えっ!?そうなんですか?
僕はゲームで興味を持って読み始めたんですけど、どっちを読んでるのかな?
おそらく『三国志演義』ですね。
本場中国では、正史は『三国志』、小説は『三国演義』と明確に分けられているんですけど、日本ではどちらも「三国志」と呼んでいるのでややこしいんです。
日本で「三国志」が広く知られるようになったのは、吉川英治さんの小説『三国志』と、横山光輝さんのマンガ『三国志』によるところが大きいと言われています。
これらはどちらも『三国志演義』を元に書かれているのですが、『三国志』と題名されていたことで、日本人の間で『三国志演義』=『三国志』というイメージが定着してしまったようです。
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じゃあ、三国志のことを知りたかったら、どっちを読んだ方が良いのかな?やっぱり正史?
いえ、初めて「三国志」に触れるのでしたら、多少史実と異なるところもありますが『三国志演義』がお勧めです。
正史『三国志』は、一人一人の足跡を記した人物伝の集まりですので、全体像が分かりづらいんです。
なるほど!やっぱり『三国志演義』で良かったんですね!
マリコちゃんは何で三国志に興味を持ったの?
映画の『レッドクリフ』を観て。
孫権がカッコ良かった!
孫権のことをもっと知りたくて。
今ではたくさんの作家さんが「三国志」を題材に小説を書いていますし、映画化やドラマ化もされています。
ですが、それぞれの作家さんの個性や脚色によって細かいところは色々違ってますので、基本の『三国志演義』を知っておくと、もっと面白くなると思いますよ。
私も『三国志演義』を読んでるんですけど、人の名前とか地名とか、次々に出て来ると訳が分かんなくなっちゃって(笑)
それでは次回から、はじめての方にも分かりやすく『三国志演義』を解説していきますよ!
正史『三国志』は、紀伝体と呼ばれる書式で書かれています。紀伝体とは、個人の伝記の集まりで、しかも非常に簡潔に書かれています。
また、1人の人物のことでも複数の人物の記録にまたがっているため、全体像を把握するのは非常に困難です。
『三国志演義』は、物語を盛り上げるための演出がされていたり、民間伝承などが盛り込んでありますので史実とは異なる部分がありますが、楽しみながら「三国志」を知ることができます。
『三国志演義』を一通り読んだ上で、正史『三国志』と比較してみるのも面白いですよ。
次回は、日本人には馴染みの薄い宦官についてと、後漢の支配力が弱体化してしまった原因である「外戚と宦官の争い」についてお話しします。