正史『三国志』、『三国志演義』に登場する人物たちの略歴、個別の詳細記事、関連記事をご案内する【三国志人物伝】の「か」から始まる人物の一覧⑬、譙郡夏侯氏(夏侯文寧・夏侯令女)です。
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系図
凡例
後漢〜三国時代にかけての人物は深緑の枠、それ以外の時代の人物で正史『三国志』に名前が登場する人物はオレンジの枠、『三国志演義』にのみ登場する架空の人物は水色の枠で表しています。
譙郡夏侯氏系図
譙郡夏侯氏系図
この記事では譙郡夏侯氏の人物、
についてまとめています。
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お⑬(譙郡夏侯氏)
第1世代(夏侯文寧)
夏侯文寧
生没年不詳。豫州(予州)・譙郡の人。娘に夏侯令女。
豫州(予州)・梁国の相。
若くして未亡人となった娘の夏侯令女に何度も再婚を勧めたが、ついに再婚させることはできなかった。
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第2世代(夏侯令女)
夏侯令女
生没年不詳。豫州(予州)・譙郡の人。父は夏侯文寧。名が令女。
曹爽の従弟・曹文叔に嫁いだが、曹文叔は夏侯令女と結婚してすぐに亡くなってしまった。
曹文叔の服喪期間が終わると、夏侯令女は、子供もなく年も若いことから「実家ではきっと自分を再婚させるだろう」と心配し、髪を切って曹文叔への変わらぬ真心を示した。
その後、実家では予想通り彼女を再婚させようとしたので、夏侯令女はそれを聞くと、即座に刀で両耳を切り落としてしまった。
彼女は曹爽の元に身を寄せて生活したが、曹爽が処刑され、曹一族がことごとく殺されると、夏侯令女の叔父は上書して、曹氏との婚姻関係を断ち切り、無理矢理に夏侯令女を家に引き取った。
当時、父の夏侯文寧は、豫州(予州)・梁国の相であったが、彼女が若いのに操を立て通しているのを可哀想に思い、また曹氏に生き残った人もいないのだから、なんとか彼女の気持ちが折れるようにと、こっそりと人を遣ってそれとなく再婚を勧めさせた。
すると夏侯令女は悲嘆に暮れて涙を流しつつ、「私もそう思っています。承知するのが正しいでしょう」と言った。
家ではこれを本心だと思って、彼女への警戒を緩めてしまった。そこで夏侯令女は、こっそりと寝室に入って刀で鼻を削ぎ落とし、布団を被って横になっていた。
母親が呼びかけても返事がなかったので布団を剥いでみると、血が寝台一杯に流れていた。家中の者は仰天して駆けつけ、その様子を見ると、みな悼み悲しんだ。
ある人が彼女に、
「人間がこの世に生きているのは、ちょうど軽い塵がか弱い草の上に乗っているのと同じです。どうして辛い目をしてそんなことまでするのです?それにご主人(曹文叔)の一門は皆殺しにされて、もう誰もいないのですよ。誰のために操を守ろうとなされるのです」
と言うと夏侯令女は、
「『仁者は盛衰によって節義を改めず、義人は存亡によって心を変えないものだ』と聞いております。曹氏が以前、隆盛であった頃でさえ、最後まで節操を貫きたいと願っていたのです。ましてや今は滅亡してしまったのです。どうして平気で見棄てられましょう。獣同然の行為を、どうして私が成し得ましょうか」
と答えた。
司馬懿はこの話を聞いて感動し、夏侯令女に「養子をもらって養育し、その子を曹氏の後継ぎとすること」を許した。彼女の名声は天下に鳴り響いた。
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