王允によって董卓に献上された貂蝉。王允に聞かされたように、貂蝉が自分に与えられることを信じて待つ呂布ですが…。
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目次
董卓と呂布の間に生まれた亀裂
画像出典元:珍蔵懐旧版四大名著連環画「三国演義」
前回は、貂蝉さんが董卓さんに献上されたところまででしたよね。
怒った呂布が王允に詰め寄ったけど、すっとぼけてうまく丸め込んでたね(笑)
そうですね。
今回は董卓の元に送られた貂蝉が、董卓と呂布の仲を裂くように立ち回ります。
ご確認
この記事は『三国志演義』に基づいてお話ししています。この、王允と貂蝉の「連環の計」については、『三国志演義』の創作になります。
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ここまでのあらすじ
まず、もう一度「連環の計」の進み具合をおさらいしておきましょう。
董卓の殺害を思い立った司徒・王允は、絶世の美女である歌い女・貂蝉を使って董卓と呂布の仲を裂き、呂布に董卓を殺害させる計略を思いつきました。これが「連環の計」です。
王允はまず、呂布に貂蝉を輿入れさせる約束をした上で、董卓に貂蝉を献上します。
このことを知った呂布は怒って王允を問い詰めますが、王允は、
「後日董卓が、呂布に貂蝉を引き合わせる手筈となっている」
と伝え、呂布を納得させました。
当然董卓は、自分に献上された貂蝉を呂布に与えるはずがありませんから、呂布は「董卓が貂蝉を横取りした」と、董卓に恨みを抱くというわけです。
ここまではバッチリだねっ!
ここから先の成功の鍵は、16歳の女の子の肩にかかってるのよね…。
そうですね。ここから先は、貂蝉の立ち回りが重要になってきます。
穢(けが)された貂蝉
では、今回のお話を始めましょう。
次の日、丞相府に出仕した呂布は、董卓から声がかかるのを待っていましたが、一向に音沙汰がありません。
居ても立っても居られない呂布が、董卓の侍女に探りを入れてみると、
「大師(董卓)さまは、夕べからお部屋さま(妾)とおやすみになったまま、まだお目覚めではないようです」
とのこと。
胸騒ぎを覚えた呂布は、足音を忍ばせて董卓の寝所に向かいました。
この時貂蝉はすでに起きていて窓際で髪を直していましたが、ふと窓の外に目をやると、庭の池の畔で呂布がこちらを見ているのが目に入りました。
そこで貂蝉は、わざと眉根を寄せて悲しげな表情をつくり、何度も涙を拭う仕草をして見せます。
(董卓の相手をしていたのは、やはり貂蝉だった…!!)
その様子をしばらく凝視していた呂布は、憤懣やるかたない気持ちを抑えてその場を立ち去りました。
さすが董卓っ!手が早いなぁ(笑)
貂蝉さん、頑張って…。
ここまでは順調ですね。
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董卓が呂布を怪しむ
董卓が呂布を怪しむ
さて、それからというもの董卓は、連日貂蝉の元に入り浸り、体調を崩してしまいます。
呂布が董卓のお見舞いにやって来た時のこと。ちょうど董卓は寝込んでいました。
看病をしていた貂蝉は呂布がやって来たことに気づくと、董卓を起こさないように身振り手振りで今の境遇を嘆いて見せます。
ちょうどその時、目を覚ました董卓の薄目に開けたその目に、呂布が何かをじっと見つめているのが映りました。
董卓は呂布の視線の先を確認するため寝たふりをしたまま寝返りを打つと、そこには貂蝉が立っています。
董卓は激怒してすぐさま跳ね起きると、「儂の女に手を出すつもりかっ!」と怒鳴りつけ、「これからは居間に入ることはならぬ!」と、近習を呼んで呂布を追い出しました。
体調崩す程夢中になってたのかよ(笑)
なんかちょっと、呂布さんかわいそう…。
そうですね(笑)
赤兎馬欲しさに養父の丁原を殺した男だよ?
李儒の助言
董卓に追い出された呂布は、帰る途中に李儒に出会います。
董卓さんの参謀の人ですねっ!
そうです。よく覚えていましたね。
怒りを露わにした呂布から事情を聞いた李儒は「呂布が心変わりしては一大事」と、董卓のところへ急ぎます。
すると李儒の助言を受けた董卓は、
「昨日は病気のために気が立っていたのだ。つまらぬことを言ってしまった。勘弁してくれ」
と呂布に謝罪をして、黄金10斤と綿20匹を贈りました。
おいおい、厄介だな李儒。
でも呂布さんは、こんなことで貂蝉さんを諦めきれないんじゃない?
その通りです。呂布は、護衛として董卓の側に仕えている時でも、貂蝉のことが頭から離れませんでした。
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鳳儀亭の密会
画像出典元:珍蔵懐旧版四大名著連環画「三国演義」
呂布の決意
そしてとうとう呂布は、貂蝉との密会を決行します。
ある日、董卓が殿中で献帝と話をしていた時のこと。
董卓の護衛を務めていた呂布はこっそりとその場を抜け出して、貂蝉のいる丞相府に向かいました。
呂布がやってきたことに気づいた貂蝉は、人目を憚るように、
「裏庭の鳳儀亭で待っていてください…」
と呂布に耳打ちします。
呂布が方天画戟を手にしたまま鳳儀亭で待っていると、しばらくして貂蝉がやってきました。
貂蝉が董卓に献上されて以降、呂布と話すのはこれが初めてです。
貂蝉は涙を流しながら、次のように言いました。
「実は、私は王司徒(王允)さまの娘ではありません。けれど王司徒(王允)さまは、私を実の娘のように扱ってくださいました。
将軍(呂布)のお側にお仕えさせていただけると伺ってからというもの、私は幸せでございました。
それなのに太師(董卓)さまは、将軍(呂布)に娶せるとの約束を破って、私の操(貞操)を破ってしまわれたのです。
すぐに死んでしまいたく思ったのですけれど、どうしても将軍(呂布)に私の気持ちをお伝えしたく、恥と知りながらも今まで生きながらえておりました。
こうして想いをお伝えできましたので、もう思い残すことはございません。
こんな穢れた体では、もう あなたさま のお世話になることはできませんから、今ここで命を捨てて、私の心をお見せしとうございますっ!」
そう言うと貂蝉は、欄干(手すり)に身を寄せて、蓮が浮かぶ池に身を投げようとします。
咄嗟に貂蝉を抱き留め、「お前の心は分かっていた…。疑ってなどおらぬっ!」と言った呂布の目には、涙が浮かんでいました。
なんだか呂布さんを応援したくなってきました…。
単純だなぁ(笑)
さて、呂布と貂蝉の逢瀬はまだ続きます。
「この世で将軍(呂布)の妻になることができないのなら、せめて来世のご縁を望みにしとうございます…」
貂蝉にとってこのまま生き続けるということは、董卓の妾として地獄の日々を送ることに他なりません。
その事に気付いた呂布は、
「いや、必ずこの世でお前を妻にしてみせるっ!」
と貂蝉に誓うと、
「今日はあの老いぼれの目を盗んでやって来たのだ。勘づかれるとまずい…」
と、任務に戻ろうとします。
すると貂蝉は、呂布の着物の端を掴んで取りすがり、涙を流しながら言いました。
「そんなに太師(董卓)さまを恐れておいでなのですか?
将軍(呂布)のお名前は雷のように天下に轟き渡っておりますのに、自分の妻と決めた女子と自由に逢うことすらできぬとは…」
すると呂布は、立ち去るために手にした方天画戟をまた立てかけ直し、貂蝉を力強く抱きしめました。
貂蝉の最後の言葉、背筋がゾクっとするなぁ。
うん…。これで呂布さんの迷いもなくなったような…。
好意を持っている女性にこんな事を言われたら、男性は後には退けませんね(笑)
呂布に方天画戟を投げつける
さて、いつの間にか呂布がいなくなっていることに気づいた董卓は、何やら不審に思い、急いで屋敷に帰って来ました。
屋敷に着いてみると、門前には見間違えるはずもない呂布の赤兎馬が繋がれています。
益々怪しく思った董卓が呂布と貂蝉を探して裏庭に出てみると、鳳儀亭の下で2人が語り合っているのが見えました。
激怒した董卓が怒鳴りつけると、呂布は仰天して、慌てて逃げ出します。
董卓は立てかけてあった呂布の方天画戟を奪い取り、呂布を追いかけますが、太っている董卓は追いつくことができません。
そして業を煮やした董卓は、とうとう呂布めがけて方天画戟を投げつけます。
ですが、呂布は身を翻してこれをかわし、方天画戟を叩き落として逃げ仰せました。
これは決定的ですね…。
呂布はドサクサに紛れて殺っちゃえば良かったのに(笑)
さすがに大義名分が立ちませんからねぇ。そんなことをしたら、呂布は董卓の残党に処刑されてしまいますよ。
でも今のままでも呂布さん、董卓さんに処刑されてもおかしくないですよね。
このままではそうなりかねませんね。
方天画戟を投げつけてるんだから、すでに董卓は殺す気だよね。
呂布さんが殺されたら、この計略は失敗に終わっちゃうっ!
そうですね。
少しマズい状況ですが、お話はもう少し続きます。
董卓が呂布を追って庭の門を出たその時、1人の男が飛ぶように駆けてきて、董卓とぶつかりました。
そして、はたしてこの男は何者なのでしょうか?というところで、『三国志演義』の第8回が終わります。
え〜っ、良いところなのにっ!誰だろう?
中国ドラマ『三国志 Three Kingdoms』では王允だったね。
どうでしょうねぇ?それは次回をお楽しみにっ!(笑)
王允によって董卓に献上された貂蝉が、自分に与えられることを信じて待つ呂布。
すでに董卓が貂蝉を自分のものにしてしまったことを知っても尚、呂布は貂蝉を諦めることができません。
董卓もそんな呂布の態度を怪しんでいましたが、ついに呂布と貂蝉が密会しているところを目撃し、董卓の疑惑は確信へと変わりました。
次回はついに王允が、呂布に董卓の殺害を吹き込みます。