国の危機に心を痛める王允(おういん)の姿に同情する歌い女(め)・貂蝉(ちょうせん)。絶世の美女である貂蝉(ちょうせん)を使って董卓(とうたく)を殺害する王允(おういん)の「連環(れんかん)の計(はかりごと)」が、ついに実行に移されます。

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呂布に貂蝉の輿入れを約束する

呂布に貂蝉の輿入れを約束する

画像出典元:珍蔵懐旧版四大名著連環画「三国演義」


タカオタカオ

前回は、貂蝉(ちょうせん)が王允(おういん)の計略に協力することを承知したところまででしたよね。

マリコマリコ

うまく行くかなぁ?失敗したら殺されちゃうよね…。

王先生王先生

そうですね。
今回は、ついに王允(おういん)の「連環(れんかん)の計(はかりごと)」が実行に移されます。

ご確認

この記事は『三国志演義(さんごくしえんぎ)』に基づいてお話ししています。この、王允(おういん)と貂蝉(ちょうせん)の「連環(れんかん)の計(はかりごと)」については、『三国志演義(さんごくしえんぎ)』の創作になります。

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連環の計とは


マリコマリコ

ちょっと良いですか?
王允(おういん)さんの計略って、なんで「連環(れんかん)の計(はかりごと)」って言うんですか? 連環(れんかん)…って?

タカオタカオ

確かに。これって「美人(びじん)の計(けい)」だよね。なんで「連環(れんかん)」って言うんだろう?

王先生王先生

良い質問ですね。


「連環(れんかん)」とは、「輪(わ)を連(つら)ねること。鎖(くさり)」を意味します。

「連環(れんかん)の計(けい)」には、

  • 物事を結びつける計略
  • 連続して複数の計略を用(もち)いることで目的を達成しようとする計略

の2つの解釈がありますが、今回の場合は、

  • 女性を用(もち)いて目的を達成する「美人(びじん)の計(けい)」
  • 敵同士を仲違(なかたが)いさせる「離間(りかん)の計(けい)」

の2つの計略を連続して用(もち)いることで目的を達成しようとする、後者の例になります。



マリコマリコ

なるほどっ!

タカオタカオ

前から気になってたけど、分からないままだったんだよね。

王先生王先生

確かにややこしいですよね。

呂布を誘い出す


王先生王先生

では、今回のお話を始めましょう。


王允(おういん)はまず、たくさんの真珠をはめ込んだ黄金の冠(かんむり)をつくらせ、こっそりと呂布(りょふ)に贈ります。すると呂布(りょふ)は、大喜びでお礼を言いに王允(おういん)の屋敷を訪(たず)ねました。

呂布(りょふ)が来ると、王允(おういん)は門まで出迎えて奥座敷に迎え入れ、上座に座らせます。

そして「なぜ自分のような者に、朝廷の大臣である王允(おういん)どのが贈り物をくだされたのか」と尋(たず)ねる呂布(りょふ)に、王允(おういん)は言いました。


「今、天下に英雄と呼べるお人は、将軍(しょうぐん)(呂布(りょふ))だけでありましょう。私は将軍(しょうぐん)(呂布(りょふ))の大才に敬意を払ったのです」


呂布(りょふ)がまんざらでもない表情をしているのを見た王允(おういん)は、さらに董卓(とうたく)や呂布(りょふ)を褒(ほ)め称(たた)え、呂布(りょふ)に酒を勧めます。

そして十分に酔いが回った頃、王允(おういん)は酒宴の席に貂蝉(ちょうせん)を呼びました。



マリコマリコ

なんだか私まで緊張してきた…。

タカオタカオ

王允(おういん)も心臓バクバクだろうな。

王先生王先生

国の存亡がかかっていますからねっ!

呂布との約束


王先生王先生

しばらくすると2人の腰元に付き添われ、美しく着飾った貂蝉(ちょうせん)が姿を現します。


「娘の貂蝉(ちょうせん)です。将軍(しょうぐん)(呂布(りょふ))のことは、もう他人とは思えませんのでお目通りさせました」


と呂布(りょふ)に紹介すると、王允(おういん)は貂蝉(ちょうせん)にお酌(しゃく)をするように命じます。


そして、貂蝉(ちょうせん)のお酌(しゃく)を受けた呂布(りょふ)が座につくように勧めると、貂蝉(ちょうせん)は目に媚(こ)びをたたえたまま、困ったように王允(おういん)の方を振り返りました。


「将軍(しょうぐん)(呂布(りょふ))は親友だ。恥ずかしがることはない。そこに座りなさい」


王允(おういん)の許しを得た貂蝉(ちょうせん)は、ゆっくりと王允(おういん)の脇(わき)に腰をおろします。

この時呂布(りょふ)は、貂蝉(ちょうせん)のあまりの あでやかさ にうっとりと見とれていました。


そしてさらに酒がすすむと、ついに王允(おういん)は核心を切り出します。


「実はこの娘を将軍(しょうぐん)(呂布(りょふ))のお側に差し上げたいと思っているのですが、お受けいだだけますかな?」


すると呂布(りょふ)は、その場にすっくと立ち上がり、


「もしそれが叶(かな)うのならば、私は王允(おういん)どのに犬馬のごとくご恩をお返ししますっ!」


と、王允(おういん)の申し出を快諾(かいだく)しました。



タカオタカオ

イチコロだねっ!(笑)

王先生王先生

その後王允(おういん)は、吉日(きちじつ)を選んで貂蝉(ちょうせん)を輿入(こしい)れさせる約束をして、呂布(りょふ)を帰しました。

マリコマリコ

でもまだ成功させるためには、やらなくてはいけないことがたくさんありますよね…。

王先生王先生

そうですね。まだ1歩前進しただけにすぎません。


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董卓に貂蝉を献上する

董卓に貂蝉を献上する

画像出典元:珍蔵懐旧版四大名著連環画「三国演義」

董卓を屋敷に招く


王先生王先生

さて、次に王允(おういん)は、董卓(とうたく)にアプローチします。


呂布(りょふ)と貂蝉(ちょうせん)の輿入(こしい)れの約束をした数日後、側(そば)に呂布(りょふ)がいないことを確認した王允(おういん)は、董卓(とうたく)を屋敷に招(まね)きます。

すると董卓(とうたく)は「司徒(しと)どののご招待とあれば、即刻参るとしよう」と、上機嫌で承知しました。


次の日の午(うま)の刻(11時〜13時)、董卓(とうたく)は矛(ほこ)を持った鎧武者100人を引き連れてやってきます。

王允(おういん)は山海の珍味で董卓(とうたく)をもてなすと、


「太師(たいし)(董卓(とうたく))どのの徳は古(いにしえ)の伊尹(いいん)・周公(しゅうこう)といえども及びません」


と、ひたすら董卓(とうたく)を持ち上げました。


伊尹(いいん)は殷(いん)王朝の始祖・湯王(とうおう)の宰相(さいしょう)で、湯王(とうおう)を輔(たす)けて夏(か)の桀王(けつおう)を滅ぼした人物。

周公(しゅうこう)は周(しゅう)の武王(ぶおう)の弟で、武王(ぶおう)の死後、宰相(さいしょう)として武王(ぶおう)の子・成王(せいおう)を輔(たす)けて反乱を平定した人物です。




タカオタカオ

呂布(りょふ)って董卓(とうたく)の護衛じゃなかったっけ?この時は来なかったの?

王先生王先生

来なかったみたいですね。

タカオタカオ

なんか都合の良い話だなぁ(笑)

王先生王先生

確かに…。王允(おういん)が董卓(とうたく)に、呂布(りょふ)を連れて来ないように言うのも不自然ですしね(笑)

貂蝉を献上する


王先生王先生

さて、日も暮れて宴(えん)も たけなわ となった頃、王允(おういん)は董卓(とうたく)を奥座敷に招(まね)きました。


奥座敷に入った董卓(とうたく)は、すっかり気を許して鎧武者を下がらせます。

すると王允(おういん)は、「宮中の楽人たちがお供しておりませんので、恐れながら我が家に仕える歌い女(め)をお目にかけましょう」と言って貂蝉(ちょうせん)を呼びました。


貂蝉(ちょうせん)の舞(まい)に見とれていた董卓(とうたく)は、舞(まい)が終わるや否(いな)や貂蝉(ちょうせん)を側(そば)近くに呼んで名を尋(たず)ね、今度は歌を所望します。

しばらくして、董卓(とうたく)が貂蝉(ちょうせん)の歌と舞(まい)に夢中になっているのを見た王允(おういん)は、


「恐れながらこの女子(おなご)を太師(たいし)(董卓(とうたく))さまに献上いたしたく存じますが、お受けいただけますでしょうか?」


と切り出します。

すると董卓(とうたく)は、「お志(こころざし)かたじけないが、どんなお返しをしたら良いやら…」と、大いに喜んで何度も礼を言いました。

王允(おういん)は、「この女子(おなご)にとっては、太師(たいし)(董卓(とうたく))さまのお側(そば)にお仕え出来るだけで、思いもよらぬ幸福にございます」と言い、すぐに馬車の支度をさせて、一足先に貂蝉(ちょうせん)を丞相府(じょうしょうふ)に送り届けました。



マリコマリコ

でもこれって、呂布(りょふ)さんは王允(おういん)さんに怒りませんか?

タカオタカオ

もちろんそこはうまくやるでしょ(笑)

王先生王先生

そうですね。
その後董卓(とうたく)は怪しむことなく席を立ち、王允(おういん)は董卓(とうたく)を丞相府(じょうしょうふ)まで見送りました。

呂布が王允を問い詰める


王先生王先生

さて、実はマリコさんが心配していた通りになるんです。


董卓(とうたく)を丞相府(じょうしょうふ)まで見送った王允(おういん)が帰路(きろ)につくと、赤兎馬(せきとば)にまたがり方天画戟(ほうてんがげき)を手にした呂布(りょふ)が、ものすごい勢いで王允(おういん)を追ってきます。

王允(おういん)に追いついた呂布(りょふ)は、馬を降りるなり王允(おういん)の襟首(えりくび)をつかんで声を荒げて言いました。


「司徒(しと)どのっ!俺に貂蝉(ちょうせん)をくれる約束をしておきながら、今日になって太師(たいし)(董卓(とうたく))に贈るとは、人を馬鹿にするにも程があるっ!」


すると王允(おういん)は、「まずは落ち着いてくだされ。ここではお話もできませぬゆえ、拙宅(せったく)にお越し下さい」と言って呂布(りょふ)を屋敷に招(まね)きました。

そして、屋敷について挨拶を済ませた王允(おういん)は、「将軍(しょうぐん)(呂布(りょふ))はなぜこの年寄りをお咎(とが)めなさる?」と呂布(りょふ)に尋(たず)ねます。

すると呂布(りょふ)は怒(いか)りを露(あら)わにして、


「貴様が貂蝉(ちょうせん)を馬車に乗せて、丞相府(じょうしょうふ)に送らせたことを知らせてくれた者がいるのだ!これは一体どういうことだっ!?」


と王允(おういん)に詰(つ)め寄りました。



タカオタカオ

王允(おういん)のすっとぼけ具合が笑えるな(笑)

マリコマリコ

呂布(りょふ)さんが怒るのも当然だよっ!どう言い訳するの?王允(おういん)さん。

王先生王先生

ここが正念場ですからね。
王允(おういん)は慌(あわ)てるそぶりもなく、次のように話して聞かせました。


「さては将軍(しょうぐん)(呂布(りょふ))、ご存知ないようですな。

昨日、太師(たいし)(董卓(とうたく))が殿中(でんちゅう)(御殿(ごてん)の中)で、『私の家を訪(たず)ねたい』とおっしゃったので、用意を整えてお待ちしていたところ、

『司徒(しと)どのには貂蝉(ちょうせん)という娘があって、(義理の)息子の奉先(ほうせん)(呂布(りょふ)の字(あざな))にくれる約束と聞いたが、口約束だけでは実に心許(こころもと)ない。そこで儂(わし)がわざわざ頼みに来たのだが、ついでに一目(ひとめ)見せてもらいたい』

と仰(おお)せられ、私も太師(たいし)(董卓(とうたく))どののお言葉を断ることもできず、貂蝉(ちょうせん)を目通りさせたのです。

すると太師(たいし)(董卓(とうたく))は、

『今日はちょうど吉日。儂(わし)が娘を連れて帰って、奉先(ほうせん)(呂布(りょふ)の字(あざな))にやることにしよう』

とおっしゃり、貂蝉(ちょうせん)をお連れになったのです。

太師(たいし)(董卓(とうたく))直々(じきじき)のお出ましに、この年寄りがお断りすることなどできないことは、ご理解いただけましょう」



マリコマリコ

これだと董卓(とうたく)さんが、後で呂布(りょふ)さんに貂蝉(ちょうせん)さんを引き合わせることになりますね。

タカオタカオ

そうさ。でも本当は自分に貰ったのだから、董卓(とうたく)は呂布(りょふ)に渡すわけがない。そうなると呂布(りょふ)は…。

マリコマリコ

董卓(とうたく)さんが横取りしたと思うのねっ!王允(おういん)さん天才っ!

タカオタカオ

いかにも董卓(とうたく)がやりそうなことだしね(笑)

王先生王先生

そうですね。
その後呂布(りょふ)は、王允(おういん)に丁重に謝罪をして帰りました。


長安(ちょうあん)に遷都(せんと)して残虐性を増していく董卓(とうたく)を見かねた王允(おういん)は、歌い女(め)・貂蝉(ちょうせん)を使って董卓(とうたく)を殺害する連環(れんかん)の計(はかりごと)を思いつきました。

そしてまず王允(おういん)は、呂布(りょふ)に貂蝉(ちょうせん)を娶(めあわ)せる約束をした上で、董卓(とうたく)に貂蝉(ちょうせん)を献上します。

これにより、董卓(とうたく)と呂布(りょふ)を仲違(なかたが)いさせる下準備が整いました。



王先生王先生

次回は董卓(とうたく)の元に送り込まれた貂蝉(ちょうせん)が、董卓(とうたく)と呂布(りょふ)の間で2人を反目させるために立ち回ります。

次回

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